(10.01-10.10 は、現在準備中です。)
10.01
(ヒント)
教科書 330 ページの命名規則をよく読み、解答すること。ハロゲンは主官能基とはならないから、命名において他のアルキル基と同じように扱われる。すなわち、アルカンの命名法と同じ考え方でよい。
(b) では、クロロとメチルの置換基について、位置番号は端に近い方の置換基に若い番号をつけ、命名的にはアルファベット順で並べる。
(c) 炭素数が同じになる場合には、置換基上の別の置換基があると考えるより別々の置換基があると考えられるように主鎖を選ぶから、構造式右側(4級炭素上の置換基)は、ひとつのメチル基部分が主鎖で4級炭素上にはメチル基とブロモメチル基があると考えるより、臭素が結合している炭素を主鎖に選び、2つのメチル基が4級炭素上に、臭素が末端炭素上に結合していると考える。
(f) 置換基の相対的な位置関係が左右どちらから数えても同じになる場合は、最初にでてくる置換基のアルファベット順で番号を決める。
(解答例)
(a) 1-iodobutane
(b) 1-chloro-3-methylbutane
(c) 1,5-dibromo-2,2-dimethylpentane
(d) 1,3-dichloro-3-methylbutane
(e) 1-chloro-3-ethyl-4-iodopentane
(f) 2-bromo-5-chlorohexane
10.02
(ヒント)
あらためてヒントは不要と思うが、曖昧である場合には3章(3.4節など)に遡ってアルカンの命名法を復習しておくこと。
(解答例)
10.03
(ヒント)
ラジカル塩素化では、水素が塩素に置き換わった生成物を与えるのであるから、まず、出発物である 2-methylpentane の構造を書き、異なる環境の水素の数を数えてみること。それぞれの水素がもともとキラル中心炭素上にあった場合と、プロキラル炭素上にあった場合に、生成物もキラル中心を持つ可能性がある。(ここで、「可能性」という表現を使っているのは、置換反応によって同じ組の置換基となってしまう場合、すなわちはじめから塩素を持ったキラル中心において、水素を塩素に置換すると、2つの塩素をもちキラル中心ではなくなる、という意味である。)
(解答例)
10.04
(ヒント)
ラジカル塩素化について、水素の級数による反応性の数値は、教科書 335 ページのデータ(中央付近の図)によれば、第1級水素について1としたとき、第2級水素で3.5、第3級水素について5である。それぞれ同じ環境の水素の存在数にこの相対反応性を乗じたものが、反応生成物の割合にきいてくる。
従って、出発物である 2-methylbutane の構造を書き、同じ環境の水素の数を数える。(この分子においては、4種類の異なる水素がある。)また、その水素(の付け根の炭素)が第何級であるかを調べ、その相対反応性の数値を乗じる。これらすべての数値を足し合わせて、これを分母として計算すると、それぞれの生成物の相対的な生成割合が計算される。
(解答例)
出発物 2-methylbutane について、1位の炭素と2位のメチル基は環境的に同じである。従って、それぞれの炭素の級数と、水素の数、そして相対反応性、およびこれらの積を羅列すると次の通りである。
1位 第1級 6 個×相対反応性 1 = 6
2位 第3級 1 個×相対反応性 5 = 5
3位 第2級 2 個×相対反応性 3.5 = 7
4位 第1級 3 個×相対反応性 1 = 3
従って、生成物および生成割合は、
1-chloro-2-methylbutane (6/21=29%)
2-chloro-2-methylbutane (5/21=24%)
2-chloro-3-methylbutane (7/21=33%)
1-chloro-3-methylbutane (3/21=14%)
である。
10.05
(ヒント)
極限構造式は3つ書くことができる。
(解答例)
10.06
(ヒント)
ラジカル臭素化の反応機構では、アルカンより水素引き抜きが起こり生じたラジカル種が、NBS から溶液中に低濃度ずつ放出される Br
2 と反応する。従ってラジカル種の安定性が反応生成物の比を決定する。特に、臭素化においては反応の選択性が高いことが多い。
この問題では、主生成物を与えるような中間体はどのような構造のラジカル種であるのか考えるとよい。そのラジカル種が他に考えうる構造のものより安定で、すなわち生じやすいということが言えれば、反応の結果を合理的に説明できたといえる。
(解答例)
メチレンシクロヘキサンにおいて、ラジカル水素引き抜きがおきるのはシクロヘキサン環上、メチレン基に隣接した位置(アリル位)の水素である。この位置の水素が引き抜かれてできるラジカルは、2つの極限構造式で示されるようなアリルラジカルの構造を持つが、その2つの極限構造式のうちより安定である(すなわち、共鳴混成体において極限構造式の寄与が大きい)と考えられるのは、二重結合が多置換である方の構造である。従って、アリルラジカルの真の構造(共鳴混成体)において、ラジカル中心(遊離電子)は、シクロヘキサン環上ではなく、側鎖の炭素上により多く分布していると考えられる。従って、生成物は、側鎖上で生じる。つまり、反応の主生成物として、1-(bromomethyl)cyclohexene を与える。
10.07
(ヒント)
アリルラジカルを生じてから臭素が生じる反応である。
(a) 二重結合の位置は、側鎖のメチル基に対して対称な位置にあるため、はじめに引き抜かれる水素は1種類であるとして考えてよい。しかし、アリルラジカルは、反応可能な位置が2箇所あることに注意すること。
(b) 二重結合の位置に対して、はじめに引き抜かれる水素が2種類あり、さらに生じるアリルラジカルについて反応可能な位置が2箇所ずつあることに注意すること。
(解答例)
10.08
(ヒント)
アルコールからハロゲン化アルキルの合成では、形式的に水酸基がハロゲンに置き換わっている。このことより、目的の生成物の構造より、原料とすべきアルコールを選ぶことができる。アルコールが第1級である場合と、第2、第3級である場合とでは必要な反応条件(試薬等)が異なるので注意すること。教科書 10.7 節を参照すること。
(解答例)
10.09
(ヒント)
Grignard 試薬 R-MgX は、炭素−金属結合を含む有機金属試薬のひとつである。金属は炭素より電気陰性度が小さいから、炭素−金属結合は C
(δ−)−M
(δ+)のように分極する。従って、形式的には、有機金属試薬はカルバニオン R
(−) と同じ反応性を持つと理解してよい。
ところで、このカルバニオン R
(−) は、アルカン R-H の共役塩基であるとみなすことができる(ブレンステッド−ローリーの定義による酸と塩基、教科書 2.7節参照)。従って、このカルバニオンによるプロトン引き抜き反応については、その共役酸であるアルカンの酸性度、およびプロトンを引き抜こうとしている相手化合物の酸性度を比較することで判断することができる(pK
a 値を用いる酸−塩基反応の予測、教科書 2.9 節参照)。すなわち、より強い酸がプロトンを失い、より弱い酸が遊離する方向の反応であれば進行し、逆であれば進行しない。
問題文で指定している表8.1(教科書270ページ)では、アルカン、アルケン、アルキンを酸として扱うときの pK
a 値を与えている。
(解答例)
10.10
(ヒント)
重水素
2D は、水素
1H の同位体。
Grignard 試薬等、有機金属試薬は、形式的にカルバニオン R
(−) と同じ反応性を持つと理解してよい。このカルバニオンが、酸から H
+を受け取ると、共役酸であるアルカン R-H を生じる。一般的にこの反応では、酸として水 H
2O を用いることが可能である(教科書 344 ページ下部より 355 ページ)。
水の代わりに、重水 H
2O を用いることも可能である。その場合は、ルイス酸として H
+ の代わりに D
+ が与えられる。
(解答例)
(10.11-10.20 は、現在準備中です。)
10.11
(ヒント)
Gilman 試薬(有機銅酸リチウム化合物)の反応の1つは、有機銅カップリング反応(教科書 10.9 節)である。これは、形式的にみるとハロゲンがアルキル基で置換される( R-X が R-R' になる)反応である。従って、この問題では、目的化合物の構造を R-R' として2つのパーツに分けて捉えることができれば、出発物質としてのハロゲン化アルキル(またはハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アリールでもよい)R-X の構造と Gilman試薬 R'
2CuLi の組み合わせが判断できる。(a) と (c)、では出発物質からハロゲン化物 R-X を得るための方法についても考慮することが問題に含まれている。
更に、Gilman試薬 R'
2CuLi も、ハロゲン化アルキル R'-X からアルキルリチウムを経由して調製することができるから、その部分についても考察するとよい。(ただし、問題中に示された原料から調製可能な場合と、そうではない場合とがある。このような問題において文中で特別なことわり書きがない場合、炭素数の少ない出発原料は一般的に入手が可能である場合が多いためであると思われるが、わざわざ出発物のひとつとして示さず、一連の反応のために必要な試薬として適宜、自分で補って用いてよい場合が多い。)
(解答例)
10.12
(ヒント)
ここでいう「酸化準位」は、2年生の基礎有機化学の授業において「酸化数」として扱った内容である。特に、水の付加、脱離では酸化数(酸化準位)は変わらないことに注意する。二重結合に水を付加させるとアルコールになるし、三重結合の場合はケトンやアルデヒドを生じる。
酸化数(酸化準位)を変化させるためには、酸化剤や還元剤が必要である。
(解答例)
10.13
(ヒント)
出発物と生成物の酸化数(酸化準位)を調べてみること。もし酸化数(酸化準位)が同じであれば、酸化でも還元でもない。
(解答例)
(a) 還元反応である。
アルデヒド(酸化数2)がアルコール(酸化数1)になっているため。ここで、還元剤は NaBH4 が供与する「ヒドリド」H- である。
(b) 酸化でも還元でもない。
水和は、隣接した炭素上に H+ と HO- が結合するので、分子内の炭素上の電子密度はトータルとしては変化しないから、酸化でも還元でもない。
この反応において、試薬として過酸化水素 H2O2 を用いられている。過酸化水素は酸化剤であるが、ヒドロホウ素化反応において中間体として生じるアルキルボラン付加物からホウ素が水酸基に置換される段階の反応機構(この教科書では扱われていないが、2年次基礎有機化学の授業中に扱った)において、ホウ素を酸化するのに用いられている。
10.14
(ヒント)
問題 10.1 のヒントを参照のこと。なお、こういった問題には常に英語で命名できるように心がけること。(英語で命名ができなければ、置換基のアルファベット順などの判断もできない。英語の命名ができる場合に日本語(カタカナ)での命名は比較的容易であるが、逆は難しい。などの理由による。)
単語末尾の e などを落としたりしがちであるから気をつけること。
(解答例)
(a) cis-1-chloro-3-methylcyclohexane
クロロ基とメチル基は命名上において優先順位に差はない。また、シクロアルカンであるから、置換基の位置からではどちらを先の番号をつけるという区別もつけられない。従ってアルファベット順で先のクロロ基が1位の炭素に結合しているとする。なお、立体を表す「cis」の部分はイタリック(斜体)であることに注意すること。
(b) 4-chloro-2-methylhept-2-ene
クロロ基、メチル基より二重結合の方が優先される官能基である。従って二重結合の位置を判断基準として番号をつける。従って主鎖は hept-2-ene(ヘプタ-2-エン)である。2-heptene(2-ヘプテン)という命名も許容されるが、IUPAC命名法においては、官能基を表す「ene」の直前に位置番号を置くことが推奨されている。最後に、全体としての命名においては置換基をアルファベット順に並べる。
10.15
(ヒント)
アルケンとNBS(
N-BromoSuccinimide)との反応は、教科書 10.5節、10.6節を参照のこと。
アリル位の水素が引き抜かれて生じるアリルラジカルは、共鳴構造を書くと明らかになるように、ラジカル中心は2つの炭素に非局在化しているから、生成物は2種類以上となる。また、(a) のように出発物が非対称なアルケンである場合には、はじめに中間体として生じるアリルラジカルも2種類以上生じる。
従って、(a) は4種類の、(b) は2種類の生成物を示すこと。
(解答例)
10.16
(ヒント)
教科書の図、または下のリンクを参照して 2-ブロモペンタンの立体配置を帰属し、キラル中心炭素の立体化学を(S)-2-ペンタノールと比較すること。
(S)-2-ペンタノールの3次元模型
2-ブロモペンタンの3次元模型
(解答例)
生成物は (R)-2-bromopentane である。水酸基が臭素に置換される際、炭素上で立体化学の反転が生じている。
R-OH と PBr3 の反応は、次のような段階を経て進むと考えればよい。
PBr3 は、亜リン酸 P(OH)3 の酸臭素化物とみなすことができ、3モルのアルコールと反応して亜リン酸エステル P(OR)3を与える。これは、酢酸 AcOH の酸臭素化物は AcBr であるように、酸の「OH」をハロゲン「X」に置換したものが酸ハロゲン化物であったことを思い出すと良い。この臭化アセチルはアルコールと反応し、酢酸エステル AcOR を与えた。この時、形式的に HBr が生成していることを思い出すこと。
一方、アルコールの立場に戻ると、R-OH は水酸基が弱い脱離基であるに過ぎない(脱離して生じる水酸化物イオンについて、その共役酸である水は相対的に弱い酸にすぎないためである)が、これをエステル化して R-OAc とすることにより、脱離性能を上げることが可能である。これは、脱離基の共役酸である AcOH が水より強い酸であるからであった。同様の理屈により、たとえばリン酸エステルやスルホン酸エステルは、酢酸エステルよりも良い脱離基を与える。従って、話を亜リン酸エステルに戻すと、アルコールでは水酸基が弱い脱離基でしかなかったものが、脱離可能になっているといえる。この炭素上に、Br-が求核攻撃することにより SN2 反応が生じると、立体化学の反転とともに臭化アルキル R-Br を与える。
10.17
(ヒント)
問題 10.1 のヒントを参照のこと。なお、こういった問題には常に英語で命名できるように心がけること。(英語で命名ができなければ、置換基のアルファベット順などの判断もできない。英語の命名ができる場合に日本語(カタカナ)での命名は比較的容易であるが、逆は難しい。などの理由による。)
(解答例)
(a) 3,4-dibromo-2,6-dimethylheptane
ブロモ基、アルキル基区別せず置換基の位置番号が小さくなるように(はじめの置換基は、主鎖の左右どちらから数えても2位のなるので同じだが、2番目の置換基が左から数えると3位になる)番号をつける。アルファベット順に並べるときは倍数接頭語の「di」は考慮せず、ブロモの b、メチルの m で比較して並べる。
(b) 5-iodohex-2-ene
側鎖のヨード基より二重結合の方が優先される官能基なので、二重結合の位置が小さくなるように主鎖に番号をつける。従って主鎖は、hex-2-ene(ヘキサ-2-エン)となる。2-hexene(2-ヘキセン)という命名も許容されるが、IUPAC命名法においては、官能基を表す「ene」の直前に位置番号を置くことが推奨されている。
(c) 2-bromo-4-chloro-2,5-dimethylhexane
ハロゲン基、アルキル基区別せず置換基の位置番号が小さくなるように主鎖に番号をつける。ブロモ、クロロ、ジメチルの順に並んでいるのは側鎖置換基名称のアルファベット順だが、b, c, d の比較によるものではない。d, c, m の順だから念のため。
(d) 3-(bromomethyl)hexane
他に優先すべき官能基がないから、あくまで炭素数が一番長いところが主鎖に選ばれる。3位のブロモメチル基は複合官能基(メチル基上にブロモ基が載っている)であるから、命名においてはカッコで括る必要がある。3-bromomethylhexane としてしまうと、「メチルヘキサン」の3位にブロモ基があるとも読めてしまうのを避けるためである。
(e) 1-bromo-6-chlorohex-2-yne
(b) と同じ理屈で主鎖は、hex-2-yne(ヘキサ-2-イン)となる。2-hexyne(2-ヘキシセン)という命名も許容される。
10.18
(ヒント)
あらためてヒントは不要と思うが、曖昧である場合には3章(3.4節、3.7節など)に遡ってアルカン、シクロアルカンの命名法を復習しておくこと。
(解答例)
10.19
(ヒント)
2-methylpentane の構造を書いてみること。2-methylpentane は5種の異なる環境にある水素を持つので、5種の生成物の構造を書かなければいけない。それぞれの生成比は、問題 10.4 と同様にして計算することが可能である。
問いの本文で「どの生成物がキラルか、生成物のどれが光学活性か」と聞いているのは、「キラル中心を持つものはどれか」「キラル中心を持つだけではなく、ラセミ体混合物ではなく一方のエナンチオマーが過剰に生じるのはどれか」と聞いているのと同じである。
(解答例)
5種の生成物を生じるうち、3種がキラル中心をもつ。しかし、いずれも (R) 体と(S) 体を等量生じるから、光学活性ではない。
キラルな生成物は次の3つ
1-chloro-2-methylpentane
3-chloro-2-methylpentane
2-chloro-4-methylpentane
キラルではない生成物は次の2つ
2-chloro-2-methylpentane
1-chloro-4-methylpentane
10.20
(ヒント)
出発物と生成物を比較したとき、たしかにアリル位を臭素化により目的物が生じるように見える。ここでは、目的物以外の生成物が生じてしまうことに問題がある。この問いでは、シス・トランスの幾何異性体を無視して、全部で3種類の生成物を生じる。
解答ではどのような中間体を経てどのような副生成物を生じるか、それらの中で、どれが主生成物となるか等を説明すればよい。問題 10.15 も参照すること。
(解答例)
(10.21-10.30 は、現在準備中です。)
10.21
(ヒント)
この問題では、アリル位の臭素化を生じる。問題 10.15、 10.20 等を参照すること。生成物は5種類ある。
(解答例)
10.22
(ヒント)
出発物と目的生成物の構造を比較して、どのような反応が必要なのかを考えればよい。
(解答例)
(a) 二重結合に対する HCl の付加反応。教科書 6.8節、6.9節参照。
(b) 1段階では無理。ハロゲン化アルキルと Gilman試薬のカップリングを使う。教科書 10.9節を参照。別解として、シクロペンテンへの水和、酸化を経てシクロペンタノンを得たのち、Wittig 反応によりメチレンシクロペンテンとし、接触水素添加により還元。別解として、シクロペンタノンに Grignard試薬 CH3MgBrを作用させ、生じたアルコールを脱水したのち、二重結合を接触水素添加により還元。別解として、ハロゲン化アルキルとしたのち、Grignard試薬とする。炭素数1のアルデヒド、すなわちホルムアルデヒドと反応させ、生じたアルコールから脱水、生じた二重結合を接触水素添加により還元。
(c) アリル位の臭素化。教科書 10.5節、10.6節参照。
(d) 二重結合への水和。教科書 7.4節、7.5節参照。
(e) ハロゲン化アルキルと Gilman試薬のカップリングを使う。教科書 10.9節を参照。
(f) アリル位の臭素化と、引きつづいての脱ハロゲン化水素による二重結合の導入。教科書 10.6節参照。
10.23
(ヒント)
(a), (b), (d) 教科書 10.7 節参照。
(c) 教科書 10.5節、10.6節参照。2種の異性体が生成物(一方が主生成物)として生じる。
(e), (f), (g) 教科書 10.8節、10.9節参照。
(解答例)
10.24
(ヒント)
下のリンクにより、構造を確認してもわかるとおり、生成物の 3-bromo-3-methylhexane も出発物である 3-methylhexane と同じ位置にキラル中心を持つ。これが光学不活性になるということは、ラセミ混合物を与えていることになる。すなわち、共通の中間体より、
(S)-3-bromo-3-methylhexane および
(R)-3-bromo-3-methylhexane の両者を等しく与えている。このことより、この共通の中間体(ラジカル中間体)の構造に関して、知見が得られる。
(S)-3-methylhexane の3次元模型
3-bromo-3-methylhexane の3次元模型
(解答例)
10.25
(ヒント)
この問題では、他のジクロロ体やポリクロロ体とともに低収率ながら生じる、
(R)-2-chloropentane の4位の炭素上でラジカル塩素化が進行して生じる生成物(2,4-dichloropentane)について考える。
反応は4位のみで進行するから、それ以外の部分は影響を受けないから、2位の立体は保持される。4位の塩素化により4位の炭素もあらためてキラル中心となる。
(解答例)
2種のジアステレオマーを生じる。
(2R,4R)-2,4-dichloropentane は光学活性である。
(2R,4S)-2,4-dichloropentane はメソ体であるから光学不活性である。
なお、(2R,4S)-2,4-dichloropentane という表記と (2S,4R)-2,4-dichloropentane という表記は、同一の構造を示していることに注意。
(以下、確認できていない内容。)命名法の原則として、主鎖の番号は一意的に決められるはずである。このように立体化学以外の要因で主鎖に番号をつけることができない場合、Cahn-Ingold-Prelog の順位則(同じ原子を同じ個数持つ場合、エナンチオメリックな関係については (R)-体が (S)-体よりも順位が高いものとすることが決まっている)を準用すると、おそらく (2R,4S)-2,4-dichloropentane という表記は正しいが (2S,4R)-2,4-dichloropentane という表記は正しくない。(確認できていない内容、ここまで。)
とはいえ、このレベルでの区別を試験などにおいて求められることは、ほぼ無いだろう。以下の「発展」も参照のこと。
(発展)
Cahn-Ingold-Prelog の順位則において、同じ原子を同じ個数持つ場合の優先順位
- 同位体については質量数の大きいものが小さいものより順位が高い。
- 二重結合の幾何異性については (Z)-体が (E)-体よりも順位が高い。
- ジアステレオメリックな関係については unlike 体((R*,S*)-体)が like 体((R*,R*)-体)よりも順位が高い。(ここで、R*, S* は、相対配置のこと。)
- エナンチオメリックな関係については (R)-体が (S)-体よりも順位が高い。
外部リンク 「順位法則」 :
http://homepage1.nifty.com/nomenclator/text/seqrule.htm
10.26
(ヒント)
ラジカル反応の機構の詳細については、教科書 5.3節も参照のこと。
また、教科書 10.4 節参照。特に反応エネルギー図の概略は、図 10.2 を参照するとよい。特に、問題文にも記されているように、ΔH
o すなわち標準反応エンタルピー(反応熱)を求めて、これをもとに考察する。教科書 5.7 節から 5.9 節までも併せて見直すこと。
ここで、反応を2段階に分けて考える。1段階目はハロゲンラジカルによるメタンの水素引き抜きである。この反応の反応エネルギーは、切れる結合と新たにできる結合の結合解離エネルギーの差として理解できる。各種化合物における結合解離エネルギーは、表 5.3 (161ページ)を参照のこと。
反応の速さは、反応エネルギーで決まるのではなく、活性化エネルギーの大小できまるから、本来は、遷移状態のエネルギーも定量的に知る必要がある。しかし、ここでは、Hammond の仮説より、反応が大きく発熱的である場合には遷移状態のエネルギーも低いと仮定できるものとする。(塩素および臭素との反応の相対的な速度を知りたいのであるから、この問題では、この程度の議論で十分である。)
同様に2段階目の反応(メチルラジカルによるハロゲンの引き抜き)についても、切れる結合と新たにできる結合の結合解離エネルギーの差として反応エネルギーを計算することができる。この反応エネルギーより、同様、Hammond の仮説より遷移状態の相対的な高さを仮定できる。
(解答例)
10.27
(ヒント)
問題 10.26 も参照すること。
(解答例)
10.28
(ヒント)
基本はアリル位の臭素化の条件である。はじめに生じるアリルラジカル中間体をすべて書くこと。それぞれの共鳴を考え、どちらが安定であるかも考察すること。
この問題では、全部で5種の生成物を与える。これをきちんと説明すること。
(解答例)
10.29
(ヒント)
各種化合物における結合解離エネルギーは、表 5.3 (161ページ)を参照のこと。結合解離エネルギーの小さな結合は、ラジカル的な開裂を起こしやすいと考えてよい。
(解答例)
10.30
(ヒント)
アリルラジカルの共鳴を参考にすること。
(解答例)
(10.31-10.40 は、現在準備中です。)
10.31
(ヒント)
ただ1種の生成物を与えるわけではない。
主に生じる(一番安定な)ラジカルを1種から、その共鳴を考慮して可能な生成物2種を書くこと。
(解答例)
10.32
(ヒント)
教科書 2.5 節、2.6 節などを見直すこと。
(解答例)
10.33
(ヒント)
問題 10.12、10.13を参照のこと。
(解答例)
10.34
(ヒント)
問題 10.12、10.13を参照のこと。
(解答例)
10.35
(ヒント)
問題 10.12、10.13を参照のこと。出発物に比べて生成物の酸化数(酸化準位)が上がる場合は酸化反応、下がる場合は還元反応である。同じ場合は、どちらでもない。
(解答例)
10.36
(ヒント)
問題 10.22 を参照すること。いずれも、Gilman試薬を用いたカップリング(炭素−炭素結合生成)反応を利用するためには、共通のハロゲン化アルキルに変換しなければならない。それぞれ、どのような反応条件が必要かを調べること。
(解答例)
10.37
(ヒント)
(a) 教科書 10.8 節を読み直すこと。
(b) 問題 10.20、10.21 などを参照のこと。
(c) 本問の(a)および、教科書 10.10 節にある Gilman 試薬による反応の機構の式(教科書347ページ)をよく読んで考えること。
(解答例)
10.38
(ヒント)
一部、Grignard 試薬が生じても、すぐに反応してしまうような官能基を持っている。それが何であるかを説明すればよい。
(解答例)
10.39
(ヒント)
問題文にも示されているとおり、この反応は「求電子付加反応」である。教科書 6.9 節を参照すること。反応で生じるカルボカチオン中間体の安定性に基づいて議論できる。
(解答例)
10.40
(ヒント)
教科書の2章を読み直すこと。なお、問題文ではフェノールが「弱い酸性物質である」と述べているが、その他のアルコールと比較すると強い酸性を示す。(塩酸や酢酸と比較すると弱いが)「酸性物質である」ことの理由として、共役塩基(フェノキシドイオン)が共鳴によって安定化を受けていることで説明される。
(解答例)
(10.41-10.50 は、現在準備中です。)
10.41
(ヒント)
ラジカル連鎖反応の式2つを書けばよい。開始反応で生じたトリブチルスズラジカルと、反応基質 R-X との反応は、問題文中にあたえられた正味の反応式と比較することで書けるはずである。
(解答例)
10.42
(ヒント)
(a) 二重結合への水和には、位置選択性を考慮して条件を選択すること。教科書 7.4節、7.5節を復習すること。
(b) アルコールからハロゲン化アルキルへの変換では、アルコールの級数により反応条件が異なることに注意すること。教科書 10.7 節参照。
(c) 炭素−炭素結合生成反応が生じている。教科書 10.9節参照。
(解答例)
10.43
(ヒント)
Hammond の仮説によれば、より安定な生成物を与える反応は、より発熱的であるから、遷移状態のエネルギーも低下し、従って速く反応する。
ここで、それぞれの反応基質 (CH
3)
3CBr、および H
2C=CHC(CH
3)
2Br のそれぞれより Br
- が脱離して生じるのは、3級のカルボカチオン (CH
3)
3C
+、および3級かつアリル位のカルボカチオン H
2C=CHC(CH
3)
2+ である。
(解答例)
10.44
(ヒント)
共鳴式においてより多くの極限構造式が書けるということは、その共鳴式が表している分子において電荷等が非局在化しているということであり、より安定な構造であることを示していることを思い出すこと。
(解答例)