(解答例)
教科書の例解は、官能基名を示さずに、その官能基を持つ化合物の一般名(ケトン、エステル、アルコールなど)を与えており、「官能基を示せ」との問いに対して必ずしも適切でないと判断できる部分もある。注意されたし。
(a) 1-cyclohexenecarboxamide
二重結合(赤)(二重結合を持つので、シクロアルケンの誘導体である。)
カルボニル基(青)(ケトン基ではない。)
アミド結合(緑)(-CONH2 まで含めてアミド基としてもよい。)
(b) 2-pyrrolidinecarboxylic acid
アミン(桃)(2級のアミンである。N 上のアルキル部分まで考えて、アミノ基と呼んでも良い。)
カルボニル基(青)(ケトン基ではない。)
カルボキシ基(茶)(カルボキシ基を持つので、カルボン酸である。なお、カルボキシ基は -OH 部分を持つが、官能基として水酸基を持つという言い方はあまりしない。)
(c) methyl 5-methyl-3-oxo-5-hexenoate
二重結合(赤)
カルボニル基(青)(左側のカルボニル基は、ケトン基と呼んでも良い。)
エステル結合(橙)(この図では、メチルエステルである。)
(d) 2-vinylbenzylalcohol
二重結合(赤)(-CH=CH2 は、ビニル基である。)
水酸基(黄緑)(アルカンに水酸基が結合しているので、アルコールである。)
芳香環(黄)(芳香環(ベンゼン環は、芳香環の中の1種)を持つので、アレーンである。また、ベンゼン環中にも二重結合が存在するが、その二重結合は、わざわざ官能基として取り上げる必要はない。)
(解答例)
示された官能基を持つような分子には、さまざまなものがある。ここでは、その中の数例のみを示す。
(a) CH3OH(メタノール)
(b) 下図(左はベンゼン、右はナフタレン)
(c) CH3CO2H(エタン酸(慣用名:酢酸))
(d) CH3NH2(メチルアミン)、(CH3)NH
2(ジメチルアミン)
(e) CH3COCH2NH2(1-アミノ-2-プロパノン):下図左。
(f) CH2=CH-CH=CH2(1,3-ブタジエン):
下図右(1,3-シクロヘキサジエン)や、CH2=C=CH2(1,2-プロパジエン)などでも良い。
(e) 上図右の CH3CONH2(エタンアミド(慣用名:アセトアミド))は、1-アミノ-2-プロパノンよりも更に単純な構造であるが、カルボニル基(C=O)の両側ともがアルキル基ではないので、ケトンではない。またアミノ基に結合しているのがアルキル基ではないので、アミンでもない。
(解答例)
(骨格構造式で示す。)
分子式は、C8H13NO2
(解答例)
(骨格構造式で示す。下図の通り。)
なお、名称は次の通り
hexane,
2-methylpentane, 3-methylpentane,
2,2-dimethylbutane, 2,3-dimethylbutane
(解答例)
(a) 以下9種のうちより2つ。
methyl butanoate, ethyl propanoate, propyl acetate,
methyl 2-methylpropanoate, isopropyl acetate
butyl formate, sec-butyl formateisobutyl formatetert-butyl formate
(b) プロパンの異なる位置にシアノ基が置換した構造は、以下の2つ。
butanenitrile, 2-methylpropanenitrile
(解答例)
(a) プロパン C3H8 には、骨格異性体は存在しない。その内の一つの水素を水酸基に置き換えたものは、次図の通り2種である。
1-propanol, 2-propanol
(b) ブタン C4H10 には、骨格異性体は2種存在する。それぞれの一つの水素を臭素に置き換えたものは、次図の通り4種である。
1-bromobutane, 2-bromobutane,
1-bromo-2-methylpropane, 2-bromo-2-methylpropane
(解答例)
ペンタン C5H12 には、骨格異性体は3種存在する。それぞれの一つの水素を取り除きアルキル基としたものは、次図の通り8種である。
アルキル基の名称は以下の通り
pentyl,*1
1-methylbutyl,
1-ethylpropyl,
2-methylbutyl,
1,1-dimethylpropyl,*2
1,2-dimethylpropyl,
3-methylbutyl,*3
2,2-dimethylpropyl*4
註:
*1 「 n- 」をつけて直鎖アルキルであることを示しても良い。(例:n-pentyl )
*2 慣用名では、 tert-pentyl
*3 慣用名では、 isopentyl
*4 慣用名では、 neopentyl
(炭素5のアルキル基で慣用名が許されるのは上記3種のみ。また、これらのアルキル基の慣用名称は、その誘導体を作ることを許さない。( phenyl基( −C6H5 )からはその誘導体として例えば 2-chlorophenyl 基を作ることができるが、chloroisopentyl 基などのような複合的な名称の部分として用いることはできない。))
(解答例)
骨格構造で示された図中の炭素原子のうち、赤で囲んだものが1級、青で囲んだものが2級、緑で囲んだものが3級、黄で囲んだものが4級である。
(a)
(b)
(c)
(解答例)
解答の詳細は省略。
3.08 の解答で第1級炭素に結合した水素が第1級水素、第2級炭素に結合した水素が第2級水素、第3級炭素に結合した水素が第3級水素である。第4級炭素は4本のC−C結合を持ち水素と結合しないから、第4級水素というものは存在しない。
(解答例)
図のうち、左端のものが最低の炭素数で与えたもの。ただし(b)については下の解説を参照すること。また図の中あるいは右は指定されていない級数の炭素を追加したもの。これらでも条件を満たしているので正解とされる。
(a)
2,3-dimethylbutane, 2,4-dimethylpentane
(b)
2-methylpropane, 3-ethyl-2-methylpentane, 4-isopropylheptane*1
(c)
2,2-dimethylbutane, 2,2,4-trimethylpentane
註 *1 isopropyl基は慣用名で、システム的な名称では 1-methylethyl基となる。したがってこの分子は
(b) 左端の分子は、置換基(イソプロピル基)を中心に考えると、その置換基が母核としてのメタンに付いていることになり(すなわち、
なお、シクロプロパンにイソプロピル基が置換したもの( isopropylcyclopropane )が、アルカンおよびシクロアルカンの中で、イソプロピル基を名称の中に含む最低の分子である。その他、分子内に二重結合や他の置換基がある場合も命名上で元となる主鎖として一番長い炭素鎖以外が選ばれる場合があり、少ない炭素数のものでもイソプロピル基を置換基として命名することになることもある。(例:2-isopropyl-1,3-butadiene )
註 *2 教科書p85 命名規則 段階2 b) 「長さの等しい二つの違った炭素鎖が存在する場合は、母体になるべく多くの分枝点があるものを選ぶ」より。
(解答例)
(a)
pentane,
2-methylbutane,
2,2-dimethylpropane
(b) 〜 (d) では、問題文中で同じ行内で書かれている部分を黄色の背景で示した。これらの構造の中で一番長い炭素鎖は、赤で示された部分(他の等価な取り方があるものもある)である。
(b)
3,4-dimethylhexane
(c)
2,4-dimethylpentane
(d)
2,2,5-trimethylheptane
(解答例)
下図の通り。なお、下図において主鎖の炭素の左から右へ番号を振った。
(a)
(b)
(c)
(d)
(解答例)
(3.07 の解答より 再掲)
pentyl,*1
1-methylbutyl,
1-ethylpropyl,
2-methylbutyl,
1,1-dimethylpropyl,*2
1,2-dimethylpropyl,
3-methylbutyl,*3
2,2-dimethylpropyl*4
註:
*1 「 n- 」をつけて直鎖アルキルであることを示しても良い。(例:n-pentyl )
*2 慣用名では、 tert-pentyl
*3 慣用名では、 isopentyl
*4 慣用名では、 neopentyl
(解答例)
骨格構造式は、左図のようになる。
主鎖は炭素数7のヘプタンに4つのメチル基が置換している。番号は図の右から振ると 3,4,5,5- となるが、左から振ると 3,3,4,5- となり(初めの数字は3で同じだが、2番目の数字が4と3で比べて)より小さくなる。
3,3,4,5-tetramethylheptane
(解答例)
(a) 1,4-dimethylcyclohexane (b) 1-methyl-3-propylcyclopentane (c) 3-cyclobutylpentane (d) 1-bromo-4-ethylcyclodecane (e) 1-isopropyl-2-methylcyclohexane or 1-methyl-2-(1-methylethyl)cyclohexane (f) 4-bromo-1-tert-butyl-2-methylcycloheptane or 4-bromo-1-(1,1-dimethylethyl)-2-methylcycloheptane
(解答例)
構造式は以下の通り。
(a)
(b)
(c)
(d)
なお、(a) は左右とも同じものを表す図である。(b) の右は 1-ethyl-1-propylcyclobutane であり、シクロブチル基のついたアルカンではない。
(c) は、シス、トランスの指定がないから立体的な区別を意識せずに構造式を書いてよい。もし指定がある場合は、教科書 3.8 節を参考にして、楔型の結合の価標を用いて書く。
(解答例)
の構造を持つので、番号は( 1,3,3- よりも小さくなるように)1,1,3- と一意的に決まる。置換基はエチル基とジメチル基なので、アルファベット順でエチル(e)、ジメチル(m)の順。従って
3-ethyl-1,1-dimethylcyclopentane
(解答例)
(a) trans-1-chloro-4-methylcyclohexane (b) cis-1-ethyl-3-methylcycloheptane
(発展)(解答例)
(a)
上のいずれで書いてもよい。水色の背景の左3点はいずれも互いに全く同じ構造を、黄色の背景の右の3点もいずれも互いに全く同じ構造を示す。左のものと右のものは、光学異性体である。(鏡に写してはじめて空間内で重ね合わせることができる。)
(b)
左右のいずれで書いてもよい。光学異性体は存在しない。
(c)
左右のいずれで書いてもよい。(左右とも同じ構造である。)(a) と同様に光学異性体が存在するが、ここではその一方のみを示している。
(解答例)
(a) 2つのメチル基はともにシクロペンタン環のつくる平面に対して下方に位置している。したがって、
cis-1,2-dimethylcyclopentane
(b) ブロモ基はシクロブタン環のつくる平面より上方に位置し、メチル基も同平面よりも上方に位置している。したがって、
cis-1-bromo-3-methylcyclobutane
(解答例)
官能基名に続くカッコ内は、その官能基を持つ化合物の一般名。
(a)
phenylalanine, C9H11O2N
芳香環(アレーン):赤
アミノ基(アミン):緑
カルボキシ基(カルボン酸):青
(b)
lidocaine (リドカイン), C14H22ON2
芳香環(アレーン):赤
アミン窒素(アミン):緑
アミド結合(カルボン酸アミド):桃
(解答例)
(a) 3,3,5-trimethylheptane
(b) trans-1-ethyl-3-methylcyclopentane
(c) 2,2,4-trimethylpentane
(d) cis-1-chloro-3-methylcyclohexane
(解答例)
赤−青:トランス 赤−緑:トランス 青−緑:シス
(発展)(解答例)
(a)
芳香環(アレーン):赤
アミノ基(アミン):緑
水酸基(アルコール):黄
(b)
二重結合(シクロアルケン):水色
カルボニル基(ケトン):橙
(c)
芳香環(アレーン):赤
アミド結合(カルボン酸アミド):桃
(d)
アミノ基(アミン):緑
カルボキシ基(カルボン酸):青
(e)
二重結合(シクロアルケン):水色
カルボニル基(ケトン):橙
(f)
三重結合(アルキン):紫
クロロカルボニル基(カルボン酸塩化物):茶
(解答例)
以下の中から、指定された数を解答すればよい。ここでは、光学異性体を除いてすべての構造を挙げた(と思う)。
(a)
上より順に,
octane,
2-methylheptane, 3-methylheptane, 4-methylheptane,
2,2-dimethylhexane, 2,3-dimethylhexane, 2,4-dimethylhexane,
2,5-dimethylhexane, 3,3-dimethylhexane, 3,4-dimethylhexane, 3-ethylhexane,
2,2,3-trimethylpentane, 2,2,4-trimethylpentane, 2,3,3-trimethylpentane, 2,3,4-trimethylpentane,
3-ethyl-2-methylpentane, 3-ethyl-3-methylpentane,
2,2,3,3-tetramethylbutane
(b)
数が多いので、名称は省略。
(解答例)
上より順に,
heptane,
2-methylhexane, 3-methylhexane,
2,2-dimethylpentane, 2,3-dimethylpentane, 2,4-dimethylpentane,
3,3-dimethylpentane, 3-ethylpentane,
2,2,3-trimethylbutane
(解答例)
(a) 3つとも同じ構造である。
(b) 左の2つは同じ構造だが、右端は異なる。
(c) 右の2つは同じ構造だが、左端は異なる。
(a) を骨格構造式に直すと、次図のようになる。
2-bromo-3-methylbutane
(b) 1,2-dihydroxybenzene と 1,3-dihydroxybenzene
(c) を骨格構造式に直すと、次図のようになる。
2-ethyl-4-methylpentanol と 2,4-dimethylhexanol
(解答例)
1-butanol, 2-butanol, 2-methyl-1-propanol, 2-methyl-2-propanol,
(n-butyl alohol, sec-butyl alohol, isobutyl alohol, tert-butyl alohol,)
methyl propyl ether, diethyl ether, isopropyl methyl ether
(解答例)
以下の例のほか、(環状構造や)多重結合を持つものも解である。
(a) 以下の構造より、任意のひとつを答える。
下段は、同じカルボニル基を持つが、ケトンではなくアルデヒド。
(b) 以下の構造より、任意のひとつを答える。
なお、下図(左端以外)のような環状のアミド類は「ラクタム」と呼ばれる。
(c) 以下の構造より、任意のひとつを答える。
なお、最下図のような環状のエステル類は「ラクトン」と呼ばれる。
(d) 例 benzaldehyde
(e) 例 methyl 2-oxobutanate
(f) 例 ethanolamine
右のような構造(窒素上に水酸基が置換したもの)は、ヒドロキシルアミンである。
(解答例)
下に示す中より適当な構造を1つ示す。
(a)
2-butanone
(b)
pentanenitrile, 2-methylbutanenitrile, 2,2-dimethylpropanenitrile, 3-methylbutanenitrile
ニトリル類の命名は、教科書778ページ。
(c)
butanedial, 2-methylpropanedial
(d)
5-bromo-2-hexene, 4-bromo-2-methyl-1-pentene, 5-bromo-3-methyl-2-pentene,
2-bromo-3,3-dimethyl-1-butene, 1-bromo-2,3-dimethyl-1-butene
臭素置換体の母核となる C6H12 の異性体は、C6H14 より派生させた13種類。これらのそれぞれについて、任意の位置の水素を臭素に置換する。対称ではない位置を赤い矢印で示した。
(e)
hexane, 2-methylpentane, 3-methylpentane,
2,2-dimethylbutane, 2,3-dimethylbutane
(f)
cyclohexane,
methylcyclopentane,
1,1-dimethylcyclobutane,
1,1,2-trimethylcyclopropane,
1,2,3-trimethylcyclopropane,
1-ethyl-1-methylcyclopropane,
1-methylethyl 基は isopropyl 基として命名してもよい。
(g)
1,3-pentadiene, 1,4-pentadiene, 2-methyl-1,3-butadiene,
1,2-pentadiene, 2,3-pentadiene, 3-methyl-1,2-butadiene
上の段、左端と右端に共通している部分構造( C=C-C=C )は「共役二重結合, conjugated double bond」と呼ばれる。
下の3つに共通している部分構造( C=C=C )は、「集積二重結合, cumulative double bond」と呼ばれ、この構造を持つ化合物を総称して「クムレン, cumulene」と呼ぶ。
最小のクムレンである propadiene, H2C=C=CH2の慣用名である「アレン, allene」を用い、その同族列名として「クムレン」の代わりに「アレン」が用いられることもある。
(h)
3-penten-2-one, 4-penten-2-one, 1-penten-3-one, 3-methyl-3-buten-2-one
複雑なケトンの命名法は、教科書715ページ。
(解答例)
(a) 以下の4通り。
左より、butan-1-ol, butan-2-ol, 2-methylpropan-1-ol, 2-methylpropan-2-ol
(b) 以下の17通り。
1級のアミン
2級のアミン
3級のアミン
ヒントを参照に、以下のように探してもよい。
(a),(f) これらのエーテルとアルコールは官能基異性体である。
(b) のヒント後半のように考えると、次図のようになる。
エーテル(青矢印側) 左 diethyl ether, methyl propyl ether, 中 isopropyl methyl ether
アルコール(赤矢印側) 左 butan-1-ol, 中 butan-2-ol, 2-methylpropan-1-ol, 右 2-methylpropan-2-ol
(c),(d) これらのケトンとアルデヒドは官能基異性体である。
ヒント後半のように考えると、次図のようになる。
ケトン(青矢印側) 左 pentan-3-one, pentan-2-one, 中 3-methylbutan-2-one
アルデヒド(赤矢印側) 左 pentanal, 中 2-methylbutanal, 3-methylbutanal, 右 2,2-dimethylpropanal
(e) 以下の4通り。
上段 メタン酸(methanoic acid)、慣用名:ギ酸(formic acid)のエステル。左から、propyl formate, isopropyl formate
中段 エタン酸(ethanoic acid)、慣用名:酢酸(acetic acid)のエステル。ethyl acetate
下段 プロパン酸(propanoic acid)、慣用名:プロピオン酸(propionic acid)のエステル。methyl propionate
(解答例)
(a) 水酸基が、第1級炭素に結合しているようなもの。
methanol, ethanol, propanol, 2,2-dimethyl-1-propanol
(b) シアノ基が、第3級炭素に結合しているようなもの。
2,2-dimethylpropanenitrile, 2-methyl-2-propylhexanenitrile,
(c) 臭素が、第2級炭素に結合しているようなもの。
2-bromopropane, 3-bromo-5-methyloctane, bromocyclpentane, 2-bromobicyclo[2.2.2]octane
(d) 2つ(以上)の水酸基があり、それぞれ第1級および第2級炭素に結合しているようなもの。
1,2,3-propanetriol (glycerol), 2-hydroxymethyl-1-cyclopentanol, glucose
(e) 化合物中の名称中にイソプロピル基が含まれるためには、以下の条件を満たす必要がある。イソプロピル基(炭素数3)が、それと炭素数が同じか、それより大きい炭素数のシクロアルカンに結合したもの。または、芳香環などに結合したもの。アミンの窒素上にイソプロピル基がある場合もありうる。
isopropylcyclopropane,
isopropylamine,
ethyl isopropyl ether,
isopropylbenzene
アルカンの一部としてイソプロピル基の構造を持つ場合は、主鎖の選び方により名称中にイソプロピル基が含まれない場合も生じるので、命名規則を参照すること。
2,3-dimethylpentane,
3-ethyl-2-methylhexane,
3-isopropyl-2-methylhexane
(f) 第4級炭素を1つ以上含むもの。
2,2-dimethylpropane,
2,2-dimethylpentane,
(解答例)
1-bromopentane,
2-bromopentane,
3-bromopentane
これ以外の C5H11Br
1-bromo-2-methylbutane,
2-bromo-2-methylbutane,
2-bromo-3-methylbutane,
1-bromo-3-methylbutane,
1-bromo-2,2-dimethylpropane
(解答例)
1-chloro-2,5-dimethylhexane,
2-chloro-2,5-dimethylhexane,
3-chloro-2,5-dimethylhexane
(解答例)
(a) sp2 (b) sp (c) sp2
(解答例)
(a) C8H16 ; isopropylcyclopentane (b) C10H16 ; 1,2,3,4,5,6,7,8-octahydronaphthalene, or dehydrodecaline, or bicyclo[4.4.0]dec-1(6)-ene (c) C13H16O ; cyclohexyl phenyl ketone
(解答例)
(a) 炭素数8で、不飽和度(二重結合または環構造の数の和)が1のものはすべて C8H16 の分子式を持ち、3-36(a) の異性体である。
(例)
cyclooctane,
1,2,4-trimethylcyclopentane
2,5-dimethyl-2-hexene
(b) 炭素数10で、不飽和度3のものはすべて C10H16 の分子式を持ち、3-36(b) の異性体である。(なお、左端が二重結合の位置異性体、右二つは骨格異性体となる。)
(例)
1,2,3,4,4a,5,6,8a-octahydronaphthalene, or bicyclo[4.4.0]dec-2-ene,
5,6-diethyl-1,3-cyclohexadiene
2,4,6-decatriene
(c) 不飽和度は6。アルデヒド、ケトン、アルコールのそれぞれが考えられる。
(例)
2-cyclohexylbenzaldehyde
3,5,7,9,11-tridecapentaene-2-one
(3,5-diisopropenylphenyl)methanol
(解答例)
(a) 環や炭素−炭素多重結合を持たないのだから、炭素−酸素二重結合が分子内に2つある。このような条件に合うのは、次の5種の構造。
2-methylpropanedial,
2-oxobutanal,
3-oxobutanal,
butanedial,
2,3-butanedione
このうち、「ビアセチル, biacetyl」(慣用名)は、右端の構造である。
酢酸(acetic acid)から誘導される置換基として、アセチル基 CH3C(=O)- があるが、これが2つ向かいあって付いた構造を持っていることが名称の由来である。
(b) 分子式より不飽和度は1。多重結合がないのだから、環構造を1つ持つことが判る。多価の元素は、炭素と窒素で併せて3つだから3員環である。
(c) 与えられた分子式より、不飽和度は0。分子内に多重結合や環構造は持たない。また、それぞれの炭素に対し水酸基があるということから、3つの酸素はすべて水酸基を構成し、エーテル結合も持たない。このため、プロパンを母体とした次の構造であることが判る。
(解答例)
(a) (b) (c) (d) (e) (f)
(解答例)
数例のみを示す。
(a)
2-methylpropane,
2,3-dimethylbutane,
2,3,4,5,6,7,8,9-octamethyldecane,
1,2,3,4,5-pentamethylcyclopentane
(b)
cyclohexane,
tricyclopropylmethane,
tricyclo[6.3.0.02,6]undecane
(c)
cyclobutane,
spirobicyclopropane,
hexane,
1,3-dimethylcyclohexane
(解答例)
(a) 第1級水素を持たないためには、第1級炭素を持たないか、第1級炭素上を何かで完全に置換しておけばよい。
cyclohexane,
1,1,1,3,3,3-hexabromo-2-(tribromomethyl)propane,
hexanedioic acid (adipic acid)
(b) 第1級水素と第3級水素しか持たないので、骨格を構成するのは、第1級、第2級および(もともと水素を持たない)第4級炭素からなる。
2-methylpropane,
2,2,3,4,4-pentamethylpentane,
1,1,2,3,3,4-hexamethylcyclobutane
(解答例)
複数の異性体を持つものは、数例のみ示した。互いに異性体であるためには、炭素数をはじめとして、分子式が同じデアル必要があるので注意すること。
(a) ハロゲンを官能基として持つハロアルカンについて考える。位置異性体としては、次の3つ。
1-bromo-2-methylbutane,
2-bromo-2-methylbutane,
2-bromo-3-methylbutane
その他の骨格異性体が多種あり。
2-bromopentane,
1-bromo-2,2-dimethylpropane
(b) エーテル結合を持つシクロアルカンを考える。
ethoxycyclobutane,
1-methoxy-3-methylcyclobutane,
1-methoxy-1-methylcyclobutane
(c) シアノ基の位置異性体は、次の1種のみが存在する。
2-methylpropanenitrile
(d) 水酸基を持つシクロアルカンを考える。
3-methylcyclopentanol,
cyclopentylmethanol,
2-cyclopropyl-1-propanol
(e) カルボニル基の位置異性体は次の通り。ただし、アルデヒド基とケトン基を区別する場合には、これらは同じ官能基を持つとは言えない。
2-propanone (acetone)
(f) フェニル基(芳香環)を持つカルボン酸は、次の3種が考えられる。(これらは互いにメチル基の位置異性体である。)
2-methylbenzoic acid (o-toluic acid),
3-methylbenzoic acid,
4-methylbenzoic acid
(解答例)
シクロアルカンの置換基の立体配置を示すためには、シクロアルカンを構成する炭素をすべて紙面の上におき、置換基を「くさび型の結合」を用いて表す方法と、シクロアルカンを構成する炭素を紙面に垂直な面内におき、置換基を「上」と「下」に示す方法とがある。
(a) 破線の左右は、対掌体(光学異性体)である。
(b) 光学異性体は存在しない。
(c) 破線の左右は、対掌体(光学異性体)である。
(d)
(解答例)
次の色分けで示した。第1級(黄)、第2級(緑)、第3級(青)、第4級(赤)。
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
(解答例)
(a) 2-methylpentane (b) 2,2-dimethylbutane (c) 2,3,3-trimethylhexane (d) 5-ethyl-2-methylheptane (e) 3,3,5-trimethyloctane (f) 2,2,3,3-tetramethylhexane (g) 5-ethyl-3,5-dimethyloctane
(解答例)
n-hexane,
2-methylpentane,
3-methylpentane,
2,2-dimethylbutane,
2,3-dimethylbutane
(解答例)
与えられた名前に添った構造(主鎖を水平に描き、左端から番号をとった位置に置換基を置いた)と、その化合物の正しい名称(正しい主鎖は青線で示した)を記す。
(a)
2,2,6-trimethyloctane
(b)
3-ethyl-2-methylhexane
(c)
4-ethyl-3,3-dimethylhexane
(d)
3,4,4-trimethyloctane
(e)
2,3,5-trimethyloctane
(f)
cis-1,3-dimethylcyclohexane
(解答例)
数例のみ示す。
(a)
1,1-dimethylcyclooctane,
cis-1,3-dimethylcyclooctane,
trans-1,5-dimethylcyclooctane
(b)
3,3-diethyl-4,4-dimethylhexane,
3,4-diethyl-2,5-dimethylhexane,
3,4-diethyl-2,3-dimethylhexane
エチル基は、3位または4位のいずれかでないと、主鎖がヘキサンではなくなってしまう。
(c)
1,1,2-trimethylcyclopropane,
1,c-2,t-3-trimethylcyclobutane,
r-1,t-2,c-4-trimethylcyclohexane
立体配置を考慮しないと環の炭素の番号が決まらない場合は、cis の番号を優先する(上記中央の例)。問い 3.18 の発展の項を参照のこと。
(d)
(左) 2-methyl-5-(3-methylbutyl)decane
右のような構造では、炭素鎖が同じ長さの時は分岐が多くなるように主鎖をとるから、5-butyl-2-methyldecane となる。
(解答例)
(a) methylcycloheptane (b) cis-1,3-dimethylcyclopentane (c) trans-1,2-dimethylcyclohexane (d) trans-1-isopropyl-2-methylcyclobutane (e) 1,1,4-trimethylcyclohexane
(解答例)
赤−青 | トランス配置 |
赤−緑 | シス配置 |
赤−黒 | トランス配置 |
青−緑 | トランス配置 |
青−黒 | シス配置 |
緑−黒 | トランス配置 |
(解答例)
2つ。
シクロヘキサン環を120度回転させると、1位、3位、5位は互いに重なる位置にあり、すべて同じメチル基がついているから、立体配置異性体については、環の構成炭素がなす平均的な平面よりも上方に置換したメチル基の数に注目して3個、2個、1個、0個と分類すると、下図のようになる。ここで、面の上方、下方には絶対的な区別はないから、破線の左の2つと、破線の右の二つは互いに区別されない。(環の上下をひっくり返すと重なる。)
(解答例)
(a) 構造異性体。
シスとトランスの差があるが、そもそも臭素の置換している位置が異なっているので、立体異性体ではなく、位置異性体である。位置異性体は、構造異性体のうちのひとつ。
(cis-1,3-dibromocyclohexane の立体異性体は、trans-1,3-dibromocyclohexane である。)
(b) 構造異性体。
2,5,5-trimethylpentane は、IUPAC 命名法に従えば 2,5-dimethylhexane である。したがって、2,3-dimethylhexane とは、メチル基の位置異性体である。あるいは、互いに骨格異性体である。位置異性体も骨格異性体も、構造異性体のうちのひとつ。
(c) 同一化合物。
cis-1,3-dichlorocyclopentane
(解答例)
1,2-dibromocyclopentane
の構造異性体のうち、位置異性体は以下の3つ。
1,1-bibromocyclopentane,
cis-1,3-bibromocyclopentane,
trans-1,3-bibromocyclopentane
また、骨格異性体には、シクロアルカンの構造を持つものと、二重結合をもつアルケンがあり得る。そのうちに2例を以下に示す。
1,2-bibromo-1-methylcyclobutane,
2,4-dibromo-2-pentene
(解答例)
cis-1,3-dimethylcyclobutane
(左右とも同じ構造を表す。)
(解答例)
一番下に示した構造図のうち、2 〜 4 の3つがこたえ。( 2 の代わりに 2' などでも良い。)
3つの置換基の間にある2つ*のシス、トランスの立体配置の組み合わせが異なる4種が互いに立体配置異性体である。これらをすべて書き出すためには、シクロヘキサン環上の一つの置換基を固定して考え、残りの2つの置換基の立体配置(シスまたはトランス)を入れ替えた組をつくるとよい。
註*:3つ置換基があれば、置換基どうしの関係は3箇所存在するが、2つが決まれば残りの1つは自動的に決まる。
ここでは、1位にあるイソプロピル基を固定することにする。(他の2つのどちらかを固定してもよい。)
一番下にしめした構造図のうち、青破線より上の段の4つ。
1-isopropyl 基 | 2-hydoroxyl 基 | 4-methyl 基 | |
menthol 1 | 下 | 上 | 上 |
− | trans | trans | |
2 | 下 | 上 | 下 |
− | trans | cis | |
3 | 下 | 下 | 上 |
− | cis | trans | |
4 | 下 | 下 | 下 |
− | cis | cis |
1-isopropyl 基 | 2-hydoroxyl 基 | 4-methyl 基 | |
1' | 上 | 下 | 下 |
− | trans | trans | |
2' | 上 | 下 | 上 |
− | trans | cis | |
3' | 上 | 上 | 下 |
− | cis | trans | |
4' | 上 | 上 | 上 |
− | cis | cis |
(解答例)
(a) ヒントを参照のこと。C2H6O 骨格は青で示した。
炭酸エステルの構造(
)を持つ以下の2つを挙げてもよい。
(b) 上図のうち、上段、中央の構造。( 2-hydroxybutanedioic acid )
(解答例)
この結果生じると期待されるような、2つの環が一つの炭素を共有しているようなものは、スピロ炭化水素と呼ばれることがある。
"スピロ結合"とは、2つの環が1個の炭素を共有するとき、その原子による連結をいう。この2環による共有原子を "スピロ原子" と呼ばれる。
スピロ炭素は sp3 混成をしており、スピロ結合した2つの環は互いに直交している構造を持つ。
スピロビシクロプロパンの3次元模型
(環式化合物で、炭素数が同数の非環式直鎖炭化水素の名称に cyclo- をつけたのと同様に)2つの脂環式環の monospiro 化合物は、炭素数が同数の非環式直鎖炭化水素の名称に spiro- をつける。このとき、各環のスピロ原子と連結する炭素の数を小さい順にピリオドでつなぎ、 [ ] で括って、spiro と炭化水素名との間に書く。
従って、この問いで生じる化合物の名称は、 spiro[2.2]pentane である。
または、 spirobicyclopropane としてもよい。
なお、単に bicyclopropane とした場合は、次のような「スピロ炭素をもたない」化合物となる。
1,1'-bicyclopropyl or 1,1'-bicyclopropane
(cf. 3-38)「ビアセチル ( biacetyl ) と同様の命名法である。同じ環式炭化水素2つからなる環集合は、対応する環式炭化水素名(e.g. cyclopropane)、またはその環式炭化水素の基名(e.g. cyclopropyl)に、bi- をつける。番号は、対応する基または炭化水素と同様につけ、一方の環にはプライム(「 ' 」のこと。よくダッシュといわれるやつ。)をつける。直結点の原子の位置番号(上の名称での「1,1'-」のこと)は、名称の前にいれる。
(解答例)
1,3,5-trioxacyclohexane
だけが、与えられた条件を満たす化合物である。
まず、分子式より、分子内には二重結合または環の構造が1つだけある。カルボニル基は持たないので、二重結合があるとすれば、それは炭素−炭素二重結合であるが、このような場合、すべての水素が等価になるような対称性の高い構造を描くことができない。
もし、カルボニル基を持っても良いのであれば、次のような構造において、すべての水素が等価となる。
dimethyl carbonate, 炭酸ジメチル
環の構造を持つもので、対称性の高いものには、1,2,3-cyclohexanetriol のような構造も考えられるが、水酸基水素と炭素の水素が区別され等価ではない。
1,2,3-cyclohexanetriol
(解答例)
cyclopentane,
1-methylcyclobutane,
1,1-dimethylcyclopropane,
1,2-dimethylcyclopropane,
1-ethylcyclopropane
1,2-dimethylcyclopropane には、シス、トランスの立体配置異性体が存在する。
(解答例)
これら2つの構造は、空間内の平行移動や分子全体の回転の操作のみで互いに重ねあわせることができず、右手と左手のような関係にある。このようなものは互いに光学異性体(鏡像異性体、対掌体)であるという。
(解答例)
1) 結合角歪みによる説明: シクロヘキサンの構成炭素を同一平面内においた正六角形の構造であるとすると、C-C-C 結合角は120度になってしまい、sp3 混成から予想される109.5度よりも大きい。教科書の図に与えられた左の構造のように、炭素原子が平面の上下に逃げることにより結合角が小さくなることができる。そのため、同一平面にあるよりも、折れ曲がった構造の方が安定である。
2) この折れ曲がりは、C-C 単結合の軸のまわりの回転によって実現される。このような空間的な原子の配置のことを、立体配座という。立体配座は、室温付近では分子のもつエネルギーによりお互いに入れ替わることができるものが多い。(教科書4章、106ページ)
3) シクロヘキサンの、この図に与えられた左の構造は、「いす型配座」と名付けられており、一番重要な寄与をしている。
4) 教科書 §4.8 および、§4.9 で扱うように、シクロヘキサンの立体配座の中で、いす型配座では、すべての隣りあった2つの炭素原子において、結合した水素が互いに一番はなれた構造(ねじれ型配座)となっているために安定である。
(解答例)
(解答例)
左が最も安定な配座、右が最も不安定な配座(の中のひとつ。)
(解答例)
青で示した結合軸が手前から向こうに重なるように視点を取る。
(a) 最も安定な配座は、ねじれ形配座の中のひとつである。2-メチルプロパンでは、回転角をかえて書いたねじれ形配座は次の3つとなるが、このエネルギーはいずれも等しく、不安定化を招く相互作用はゼロである。
(b) 最も不安定な配座は、重なり形配座の中のひとつである。2-メチルプロパンでは、回転角をかえて書いた重なり形配座は次の3つとなるが、このエネルギーはいずれも等しい。(重なり型相互作用の値については、ヒントの (3) を参照のこと)
(c) (d) グラフの概形および、その極大、極小点のエネルギーの相対値は次のグラフの通り。
(解答例)
青で示した結合軸が手前から向こうに重なるように視点を取る。
(a) 最も安定な配座は、ねじれ形配座の中のひとつである。2,3-ジメチルプロパンでは、回転角をかえて書いたねじれ形配座は次の3つとなる。
左のものでは、Gauche 相互作用が2箇所、中央および右のものでは、Gauche 相互作用が3箇所存在する。従って、左のものが一番安定な配座である。
(b) 最も不安定な配座は、重なり形配座の中のひとつである。2,3-ジメチルプロパンでは、回転角をかえて書いた重なり形配座は次の3つとなる。
中央のものは、2組のメチル−メチルの重なり相互作用(11.0 kJ/mol)と、水素−水素の重なり相互作用(4.0 kJ/mol)を持つ。左右の2つは、1組のメチル−メチルの重なり相互作用と、2組の水素−メチルの重なり相互作用(6.0 kJ/mol)をもつ。
以上を考慮すると、中央のものが一番不安定な立体配座である。
(解答例)
上図のようになり、3組のメチル−メチルの Gauche 相互作用によるひずみエネルギーがあるから、全ひずみエネルギーは、
3.8 kJ/mol × 3 = 11.4 kJ/mol
である。
(解答例)
シクロヘキサン (cyclic-(CH2)6) は、シクロプロパン (cyclic-(CH2)3) に対して分子量が倍であるから、同じ重さ当たりではシクロプロパンはシクロヘキサンの2倍の物質量(モル数)を含む。
シクロヘキサン1モルを燃焼させたとき、ひずみエネルギーが0であるから、その反応熱は、
−ΔHcom(hexamethylene, straight-(CH2)6 )
に等しい。一方、シクロプロパン2モルを燃焼させたとき、その反応熱は、
2 × [−ΔHcom(cyclopropane, cyclic-(CH2)3 )]
= 2 × ( [−ΔHcom(trimethylene, straight-(CH2)3 )] + E環ひずみ )
に等しく、環ひずみエネルギー E環ひずみ は 115 kJ/mol である。
[−ΔHcom(trimethylene, straight-(CH2)3 )] × 2 = [−ΔHcom(hexamethylene, straight-(CH2)6 )]
であるから、1モルのシクロヘキサンと2モルのシクロプロパンの燃焼熱の差は、次式で表される。
[−ΔHcom(cyclohexane, cyclic-(CH2)6 )] − 2 × [−ΔHcom(cyclopropane, cyclic-(CH2)3 )]
= 2 × E環ひずみ(cyclopropane) = 230 kJ
つまり、環ひずみのないシクロヘキサンを燃焼させたよりも、環ひずみの大きいシクロプロパンを燃焼させたときの方が(環ひずみエネルギーの分だけ)発熱量が多い。このため、燃料としては、シクロプロパンの方が効率が良いと言える。
hydrocarbons | −ΔHcom / kJ mol-1 |
---|---|
methane, CH4, (g) | 890 |
ethane, C2H6, (g) | 1560 |
propane, C3H8, (g) | 2220 |
butane, C4H10, (g) | 2878 |
pentane, C5H12, (g) | 3537 |
cyclopropane, C3H6, (g) | 2091 |
cyclohexane, C6H12, (l) | 3920 |
(解答例)
シクロプロパン分子中に、水素−水素重なり形の相互作用は6組ある。(ひとつの水素に対し、2つの隣接炭素上の水素と互いに重なり形相互作用するので、環の上で3組、下で3組ある。)
したがって、重なり形相互作用によるひずみエネルギーは、
6 × 4.0 kJ/mol = 24.0 kJ/mol
である。これは、シクロプロパンの全環ひずみ 115 kJ/mol に対して 20.9 % である。残りの79.1 % は、結合角のひずみによるものである。
(解答例)
cis-1,2-dimethylcyclopropnane のもつ全環ひずみエネルギー:126 kJ/mol
水素−水素の重なり形相互作用 × 3 = 12.0 kJ/mol
水素−メチルの重なり形相互作用 × 2 = 12.0 kJ/mol
メチル−メチルの重なり形相互作用 × 1 = 11.0 kJ/mol
結合角のひずみによるもの(シクロプロパンと同じとする) 91 kJ/mol
trans-1,2-dimethylcyclopropnane のもつ全環ひずみエネルギー:123 kJ/mol
水素−水素の重なり形相互作用 × 2 = 8.0 kJ/mol
水素−メチルの重なり形相互作用 × 4 = 24.0 kJ/mol
結合角のひずみによるもの(シクロプロパンと同じとする) 91 kJ/mol
以上の計算から、メチル基間の重なり形相互作用をもつ cis- 体の方がより大きな燃焼熱をもつ。
(解答例)
平面形を仮定すると、シクロペンタン中には全部で10組の水素−水素の重なり形の相互作用が存在するから、
10 × 4.0 kJ/mol = 40.0 kJ/mol
の(重なり形相互作用に由来する)ねじれひずみが存在することになる。
これが折れ曲がりにより 26.0 kJ/mol まで軽減されたとすれば、35 % の軽減である。
環ひずみは、結合角のひずみと重なり形相互作用によるねじれひずみからなる。
この計算では、平面型でも、折れ曲がったあとでも、結合角のひずみ無視できると仮定している。これは、正五角形の内角が 108 度であり、sp3 混成炭素の結合角と近いためである。(教科書 114 ページ 上半部分)
(解答例)
教科書の解答例にあるように、「2つのメチル基がより離れている (a) の配座の方が安定である。」
C3 炭素を C2-C1-C4 の3つの炭素のつくる平面に対して、持ち上げる、または下げることによって2つの立体配座 (b) および (a) ができるものと考えよう。
この2つの立体配座について、シクロブタン環の C2-C1 軸(緑矢印の方向)に沿った Newman 投影図を書くと、次図のようになる。
メチル基と水素は重なり形の相互作用が小さくなるように、C2-C1 軸が回転し(その結果として C3 炭素が上がったり、下がったりして)これらの立体配座を達成しており、完全な重なり形ではない。(教科書 118ページ)
このときに、図から判るように、C1 上のメチル基が隣接する炭素 C2 上の水素との間で持つ重なり形相互作用の大きさは、いずれの立体配座においても同じである。
しかし、立体配座 (b)(図、中央)では、C2-C3 結合に注目すると、C1-CH3 結合と C1-C4 結合の間にはさまれており、C1-CH3 結合との間に Gauche 的な相互作用を生じている。これが、立体配座 (a) よりも (b) の方が不安定となっている理由である。
(解答例)
図、左の2つが環の反転により生じる配座異性体。上の配座での水酸基がアキシャル位、下の配座での水酸基はエカトリアル位にある。
環の面の上方に水酸基をもつシクロヘキサノールについて、炭素の番号をつけて環の反転の前後での対応を示してある。また、下方、右の立体配座は、環の上下を逆になるように、C1-C4軸に沿って回転させたもので、水酸基は同じエカトリアル位であるが、環の面の下方になっていることが判る。
(解答例)
図、上段左は、1-methyl 基と 4-methyl 基の位置の組み合わせが(下、上)であるが、右図では、C1-C4 軸に沿った回転(または、環に垂直な軸に沿った回転)により(上、下)となっているが、左右とも同じものである。これらにおいては、2つのメチル基はともにエカトリアル位にある。
これに対し、これを環反転させた図下段では、1-methyl 基と 4-methyl 基の位置の組み合わせが(下、上)のままであるが、2つのメチル基ともアキシャル位にある。
(解答例)
反転前 | 反転後 | 光学異性体 | |||
---|---|---|---|---|---|
1-緑 | 下 | アキシャル | エカトリアル | 上 | エカトリアル |
2-赤 | 下 | エカトリアル | アキシャル | 上 | アキシャル |
4-青 | 下 | エカトリアル | アキシャル | 上 | アキシャル |
ただ単に、環の反転でアキシャルとエカトリアルが入れ替わる、とだけ考えると、右のような光学異性体を描くことになってしまう。これは、環の反転によって生じる構造とは、空間内の平行移動や回転によって重ね合わせることは不可能である。 | |||||
反転後 | |||||
下 | エカトリアル | ||||
下 | アキシャル | ||||
下 | アキシャル | ||||
変則的だが、このような書き方もできる。環の反転(環を構成する炭素の作る平均的な面よりも上にあった炭素(C2, C4, C6)は環の反転により下に、下にあった炭素(C1, C3, C5)は上にくる)を、同じ形のいす形シクロヘキサンの、炭素番号を一つずらして表現している。なお、環の反転で置換基の結合の上下は変化せず、アキシャルとエカトリアルが入れ替わっている。 |
(解答例)
1-置換シクロヘキサンの、C1-C2(および C5-C4)軸方向からみた Newman 投影式を、置換基がエチル基、イソプロピル基、t-ブチル基と変化させて示した。
この図(および、ヒントで示した置換基がメチル基の時の Newman 投影式)を比較すると、t-ブチル基の時以外は、ゴーシュ相互作用の大きさが、ほぼ同じであることが予想できる。
また、C1-置換基 軸の方向から(すなわち、シクロヘキサンの環の平面に(ほぼ)垂直な方向から)眺めた時の、1,3-ジアキシャル相互作用の様子を模式的に示した。ただし、白丸は、3位、および5位のアキシャル水素である。置換基は、左より、水酸基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基である。
水酸基では、酸素上の(水素より小さな)孤立電子対が3位、および5位のアキシャル水素と反発するだけであるのに対し、メチル基、エチル基、イソプロピル基では、置換基の中の C-H 結合が、また、t-ブチル基では、置換基の中の C-CH3 結合が、それぞれ3位、および5位のアキシャル水素と反発する。
これらの説明と、教科書 p126 表4.2 の値との対応を確認しておくこと。
(解答例)
1-置換シクロヘキサンの、C1-C2(および C5-C4)軸方向からみた Newman 投影式を、置換基が水素およびシアノ基の場合について示した。シアノ基は直線状の構造(R-C-N の結合角が180度)であるから、図のようにまっすぐに伸びており、その結果として 1,3-ジアキシャル相互作用は小さい。(4.14 のヒントの、メチル基の場合の Newman 投影図と比較してみること。)
(解答例)
表より、1-bromocyclohexane のもつ立体ひずみは、2 × 1.0 kJ/mol = 2.0 kJ/mol となる。
これを、教科書 p125 の図 4.18 にあてはめると、(下巻、付録D、p1281 に用意された解答とは若干ずれがあるが)臭素がアキシャル位にくる配座異性体の割合(不安定な異性体と書かれた赤い線から読む)は、およそ 25 % となる。
(発展)で述べた計算式を用いるなら、300 K において、>臭素がアキシャル位にある配座異性体の割合は、 31 % と計算される。
1 / ( 1 + e(2.0 / 2.5)) = 0.310
substituent | steric strain / kJ mol-1 | アキシャル体の存在割合 / % |
---|---|---|
-H | 0 | 50.0 |
-F | 0.5 × 2 | 40.1 |
-Br | 1.0 × 2 | 解答例参照 |
-OH | 2.1 × 2 | 15.7 |
-CH3 | 3.8 × 2 | 4.6 |
-CH2CH3 | 4.0 × 2 | 3.9 |
-CH(CH3)2 | 4.6 × 2 | 2.5 |
-C6H5 | 6.3 × 2 | 0.64 |
-C(CH3)3 | 11.4 × 2 | 0.011 |
(解答例)
下図には、置換基と 1,3-ジアキシャル相互作用する水素を書きこんである。
stable conformer | less stable conformer | ratio | ||
---|---|---|---|---|
(a) trans-1-chloro-3-methylcyclohexane | ||||
2.0 kJ/mol | 7.6 kJ/mol | ΔE = 5.6 kJ/mol 90.4 : 9.6 | ||
(b) cis-1-ethyl-2-methylcyclohexane | ||||
7.6 kJ/mol + 3.8 kJ/mol* |
8.0 kJ/mol + 3.8 kJ/mol* |
ΔE = 0.4 kJ/mol 54.0 : 46.0 | ||
(c) cis-1-bromo-4-ethylcyclohexane | ||||
2.0 kJ/mol | 8.0 kJ/mol | ΔE = 6.0 kJ/mol 91.7 : 8.3 | ||
(d) cis-1-tert-butyl-4-ethylcyclohexane | ||||
8.0 kJ/mol | 22.8 kJ/mol | ΔE = 5.6 kJ/mol 99.7 : 0.3 |
(解答例)
化合物名 : 1-chloro-2,4-dimethylcyclohexane
反転前 | 置換基 | 反転後 | |
---|---|---|---|
アキシャル | 1-chloro | 下 | エカトリアル |
2 × 1.0 kJ/mol | − | ||
エカトリアル | 2-methyl | 下 | アキシャル |
− | 2 × 3.8 kJ/mol | ||
アキシャル | 4-methyl | 上 | エカトリアル |
2 × 3.8 kJ/mol | − | ||
1,3-ジアキシャル相互作用によるひずみエネルギーの合計 | |||
9.6 kJ/mol* | ΔE = 2.0 kJ/mol | 7.6 kJ/mol* |
(解答例)
いす形の立体配座では、2つの tert-butyl 基のうちいずれかがアキシャル位にくることになり、かなりの立体ひずみを持つことになる。ねじれ舟形の配座では、2つの tert-butyl 基がどちらもエカトリアル位にくることができるために、いす形からねじれ舟形になるときのひずみを補って安定となることができる。
いす形配座の3次元分子モデル
ねじれ舟形配座の3次元分子モデル
定性的には、そういうことなのだが、定量的な説明をしようとするとうまくいかない(…気がする)。下の表参照。
trans-1,3-di-tert-butylcyclohexane の、いす形および(ねじれ)舟形2種の3つの配座異性体がある。( 1-tert-butyl 基は環よりも上、3-tert-butyl 基は環よりも下とした。この上下関係が逆であるものは、光学異性体となる。また、いす形と舟形のそれぞれの配座異性体は、C2, C3, C5, C6 のつくる平面よりも、C1, C4 をそれぞれ上下させて生じさせた。)
配座異性体 | その他のひずみ | 置換基 | |
1-tert-butyl 基 | 3-tert-butyl 基 | ||
いす形 − | エカトリアル位 − | アキシャル位 2 × 11.4 kJ/mol | |
いす形 − | アキシャル位 2 × 11.4 kJ/mol | エカトリアル位 − | |
上のいす形の2つは、実は同じものである。 ( C2-C5 軸に沿って180度回転させることで、互いに重ね合わせることができる。) | |||
ねじれ舟形 23 kJ/mol | エカトリアル位 − | エカトリアル位 − | |
ねじれ舟形 23 kJ/mol | アキシャル位 C4-アキシャル水素との相互作用 | アキシャル位 C2,C5,C6-アキシャル水素との相互作用 |
(解答例)
cis-decaline (上)と trans-decaline (下)の構造を示す。左右とも同じものを表しており、左図、矢印の方向からの視点で見たものが右図となる。
橋頭位の水素は赤い結合で表した。これがシスになっているものが cis-decaline 、トランスになっているものが trans-decaline である。
ここで、黒で示したシクロヘキサン環を中心に考え、これに結合している置換基についてまとめておく。
C1−Ha | C1−CH2(C10) | C6−Hb | C6−CH2(C7) | |
cis-decaline | 上 | 下 | 上 | 下 |
アキシャル | エカトリアル | エカトリアル | アキシャル | |
アキシャル位の置換基は水素なので、1,3-ジアキシャル相互作用をもたない。 | アキシャル位の置換基は、青で示した環の一部をなすメチレン( -CH2- )なので、1,3-ジアキシャル相互作用がある。 | |||
trans-decaline | 上 | 下 | 下 | 上 |
アキシャル | エカトリアル | アキシャル | エカトリアル | |
アキシャル位の置換基は水素なので、1,3-ジアキシャル相互作用をもたない。 | アキシャル位の置換基は水素なので、1,3-ジアキシャル相互作用をもたない。 |
左がトランス体、右がシス体。橋頭位の水素をそれぞれ確認すること。 | |
左がトランス体、右がシス体。 上の列の写真とは違う視点から見ているが、橋頭位の水素を確認すると、上の列と同じものであることが確認できる。 | |
(解答例)
trans-1-chloro-3-methylcyclohexane
置換基 | 1-chloro | 3-methyl |
環平面の | 下 | 上 |
a/e | エカトリアル | アキシャル |
置換基 | 1-chloro | 3-methyl |
環平面の | 下 | 上 |
a/e | アキシャル | エカトリアル |
(解答例)
環の反転によっても、置換基の上下は入れ替わらない。従って、
置換基の色 | 2位-赤 | 4位-黄 | 1位-青 |
環平面の上下 | 上 | 上 | 上 |
環反転前 a/e | アキシャル | アキシャル | エカトリアル |
環反転後 a/e | エカトリアル | エカトリアル | アキシャル |
(解答例)
α-glucose | β-glucose |
(解答例)
(a) 下の図の2種類のねじれ形配座が考えられるが、より安定なのは左。
(c) のような定量的な見積もりにより、これら二つの配座の間のエネルギー差は、3.8 kJ/mol。これは、(発展)で示した根拠によれば、2つの配座だけを考えたとして、左のより安定な配座にある分子は右のねじれ形配座にある分子の5倍程度存在することを示す。
(b) 下の図の2種類の重なり形配座が考えられるが、より不安定なのは右。
一番不安定な重なり形配座と一番安定なねじれ形配座のエネルギー差は、17.2 kJ/mol。この値は、2つの配座だけを考えたとして、安定なねじれ形配座にある分子の数が、不安定な重なり形配座にある分子の約1000倍であることを示す。
(c) 以下のようになる。
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−メチル 0 kJ/mol
メチル−メチル 3.8 kJ/mol (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 4.0 kJ/mol (緑矢印)
水素−メチル 6.0 kJ/mol (橙矢印)
メチル−メチル 11.0 kJ/mol (赤矢印)
(解答例)
2,3-dimethylbytadiene の構造は、以下の通り。
従って、以下の3つのねじれ形配座が可能である。
このうち、左のもの(2つの水素がアンチ形にあるもの)では、メチル−メチルのゴーシュ相互作用が2つであるのに対し、残りの二つ(2つの水素がゴーシュ形にあるもの)では、メチル−メチルのゴーシュ相互作用が3つある。したがって、これらの間のエネルギー差は、3.8 kJ/mol である。
なお、4.24 と同様に定量的なエネルギー図を描くと、以下のようになる。
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−メチル 0 kJ/mol
メチル−メチル 3.8 kJ/mol (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 4.0 kJ/mol (緑矢印)
水素−メチル 6.0 kJ/mol (橙矢印)
メチル−メチル 11.0 kJ/mol (赤矢印)
(解答例)
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−臭素 0 kJ/mol
臭素−臭素 (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 (緑矢印) 4.0 kJ/mol
水素−臭素 (橙矢印) 7.0 kJ/mol ← 問題 4.28 より
臭素−臭素 (赤矢印)
ここで、およその大きさは、n-butane の C2-C3 結合軸の回転に関するエネルギー(下図)を参照とした。
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−メチル 0 kJ/mol
メチル−メチル 3.8 kJ/mol (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 4.0 kJ/mol (緑矢印)
水素−メチル 6.0 kJ/mol (橙矢印)
メチル−メチル 11.0 kJ/mol (赤矢印)
(解答例)
分子の双極子モーメントは、様々な配座をとっている分子が、それぞれの構造に応じて示す値の平均となると考えられる。
1,2-ジブロエタンがとる配座のうちで、一番安定なものは、2つの臭素がアンチとなる立体配座である。このアンチ形配座から予測される分子の双極子モーメントはゼロとなるから、もしすべての分子がこの配座をとっているとすれば、観測される双極子モーメントもゼロとなるはずである。ところが、実験的に μ = 1.0 D の双極子モーメントが観測されている事実より、双極子モーメントがゼロではない配座をとる分子があることがわかる。
最大の双極子モーメントを持つ立体配座は、2つの臭素が重なり形をとるものであるが、これはかなり不安定なので、ほとんど存在しない。(下の解析で示すように、重なり型配座は、すべて併せても0.15%程度しかない。)
2つの臭素がゴーシュとなる立体配座も、双極子モーメントをもつ。これが有意な量(下の解析で示すように、およそ20%強。)存在しており、分子の双極子モーメントに寄与していると考えられる。
1,2-dibromoethane のそれぞれの回転配座に対応する双極子モーメントの方向を矢印で書き込んだ。また、これらの配座のエネルギーの定量的な取り扱いと、これに基づいたそれぞれの配座の寄与の定量的な議論は、以下のようになる。
図の下の数値は、ボルツマン分布より予測される相対的な存在度。
1 | : | 1/e(18/2.5) | : | 1/e(5/2.5) | : | 1/e(20/2.5) | : | 1/e(5/2.5) | : | 1/e(18/2.5) |
1 | : | 0.00075 | : | 0.135 | : | 0.00034 | : | 0.135 | : | 0.00075 |
78.6 % | : | 0.06 % | : | 10.6 % | : | 0.03 % | : | 10.6 % | : | 0.06 % |
(解答例)
(a) 7.0 kJ/mol [ 計算式 : 15.0 − (4.0 × 2) = 7.0 ]
(b) 以下の通り。
(解答例)
左図のように、すべての炭素が直線的に伸びた立体配座をとる。このとき、C2-C3 結合軸にそった Newman 投影図(右図)を見ると、大きな置換基である手前のメチル基(C1)と向こう側のエチル基(C4-C5)が互いにアンチになったねじれ形をとっていることがわかる。
(解答例)
左図のように、すべての炭素と2つの塩素が直線的に伸びた立体配座をとる。このとき、C1-C2 結合軸、およびC3-C4 結合軸にそった Newman 投影図(右図)を見ると、大きな置換基である塩素とアルキル基が互いにアンチになったねじれ形をとっていることがわかる。
(解答例)
ただし、アキシャル位の水素は H(a) で示し黄色で、エカトリアル位の水素は H(e) で示し水色で、それぞれ記した。
また、シクロヘキサン環の平面に対して上の水素は赤丸で、下の水素は緑丸で囲んである。アキシャル位の水素6つのうち、半分の3つは環の上方に、残りの3つは環の下方に結合している。また、エカトリアル位の水素6つのうち(ひとつおきの炭素に結合した)3つは環の上方で、残りの3つは環の下方である。
なお、この図を C1-C2 軸および C5-C4 軸方向から見た Newman 投影図と対応させておこう。
この図からも、すべてのアキシャル水素(黄色)が環のなす平面に対して垂直な方向にでており、またエカトリアル水素(水色)が環のペリフェラルな(環の縁の方向を向いた)方向にでていることがわかる。また、赤丸で囲んだ6つの水素(3つはアキシャル、3つはエカトリアル)は、環の上方に結合しており、緑色で囲んだ6つの水素(3つはアキシャル、3つはエカトリアル)は、環の下方に結合している様子も見てとれる。
また、このいす形配座のシクロヘキサンの環反転について考えてみよう。
まず、この「いす形配座」のシクロヘキサンの水素のマーキングはそのままにして、6つの炭素が同一平面内にくるようにしてみよう。Newman 投影図との対応で考えるために、C1、C2、C4、C5 の4つの炭素を固定したまま、C3 を環の上方へ、C6 を環の下方へ折り返す。実際には、隣りあった炭素を交互に上げ下げすることに対応する。(分子モデル等でためしてみると判りやすい。)この動きの際に、炭素−炭素結合の軸に沿ってのねじれ(回転)が生じ、立体配座はねじれ形から重なり形に近づく。
図の中央に示したように、この配座においては、任意の炭素−炭素結合に注目すると、いずれも水素が重なり形となっており、エネルギー的に不利な立体配座である。
C3 の環の上方へ、C6 の環の下方への動きをそのまま続行させると、環反転がおきる(図右)。左側のいす形配座では、環のなす平均的な平面より上のある炭素は、C2、C4、C6 であったのが、環の反転とともに C1、C3、C5 に入れ替わり、同時にエカトリアル位にあった水素はすべてアキシャル位に、またアキシャル位にあった水素はすべてエカトリアル位に移動している。(ただし、水素が結合している方向が環の平均的な面に対して上か下かについては、変化しない。)
(解答例)
シクロヘキサンの環を構成する炭素に1から6までの番号を振り、それぞれに結合した水素(環の上方、および環の下方)について、ある「いす形配座」におけるアキシャルとエカトリアルの関係を表にまとめると、以下のようになる。
反転前 | 反転後 | ||
---|---|---|---|
1位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
下 | アキシャル | エカトリアル | |
2位 | 上 | アキシャル | エカトリアル |
下 | エカトリアル | アキシャル | |
3位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
下 | アキシャル | エカトリアル | |
4位 | 上 | アキシャル | エカトリアル |
下 | エカトリアル | アキシャル | |
5位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
下 | アキシャル | エカトリアル | |
6位 | 上 | アキシャル | エカトリアル |
下 | エカトリアル | アキシャル |
(解答例)
(省略)4.32と同じ表を使って考えてみよ。
(解答例)
cis-体は、2つの置換基が(アキシャル、アキシャル)または、(エカトリアル、エカトリアル)の位置に来るのに対し、trans-体では、環の反転があっても常に(アキシャル、エカトリアル)の組み合わせになる。これらの配座の中で一番安定なのは、立体的に大きな置換基がすべてエカトリアル位にある配座だから、2つの置換基がどちらもエカトリアルに来ることのできる cis-体の方が trans-体にくらべて安定である。(2つの置換基が両方ともアキシャルになる配座は trans-体よりも不安定であるが、より安定な配座のみをとる。)
4.32 の解答例で示した表の一部を抜粋する。
反転前 | 反転後 | ||
---|---|---|---|
1位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
3位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
反転前 | 反転後 | ||
---|---|---|---|
1位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
3位 | 下 | アキシャル | エカトリアル |
(解答例)
反転前 | 反転後 | ||
---|---|---|---|
1位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
4位 | 上 | アキシャル | エカトリアル |
反転前 | 反転後 | ||
---|---|---|---|
1位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
4位 | 下 | エカトリアル | アキシャル |
(解答例)
1,2-dimethylcyclobutane の立体配置と、それに対応する立体配座を、Newman 投影式で示した。
左の立体配置は、cis-体である。右の2つは、trans-体であるが、異なる立体配座をもつ。これらの中では、2つのメチル基がより遠くなった、trans-体のとる中央に示された立体配座が最も安定である。
1,3-dimethylcyclobutane の立体配置と、それに対応する立体配座を示した。
左の2つは、cis-体のもので、環の反転により生じる配座異性体である。右の2つは、trans-体の立体配座であるが、どちらも同じである(上下を入れ替えるように回転させると、重ねあわせることができる)。これらの中では、2つのメチル基がより遠くなった、cis-体のとる左から2番目の立体配座が最も安定である。
なお、次に示す二つのtrans-1,2-dimethylcyclobutane は、互いに光学異性体であるので、厳密には、この二つは互いに重ねあわせることができない。(環の反転などによっても、互いに入れ替わらない。)
(解答例)
二つの立体配座異性体は、環の反転に伴い、次の表のように置換基のアキシャルとエカトリアルが入れ替わるから、下図のようになる。
置換基 | 反転前 1 | 反転後 2 | |||
---|---|---|---|---|---|
光学異性体 A | 1-chloro group 環の上 |
エカトリアル | アキシャル | ||
2-methyl group 環の上 | アキシャル | エカトリアル | |||
立体ひずみ | 3.8 kJ/mol × 2 | 1.0 kJ/mol × 2 | |||
1.0 kJ/mol* | 1.0 kJ/mol* | ||||
光学異性体 A と B は、環の反転では入れ替わらない。 | |||||
光学異性体 B | 1-chloro group 環の下 |
アキシャル | エカトリアル | ||
2-methyl group 環の下 | エカトリアル | アキシャル | |||
立体ひずみ | 1.0 kJ/mol × 2 | 3.8 kJ/mol × 2 | |||
1.0 kJ/mol* | 1.0 kJ/mol* |
(解答例)
二つの立体配座異性体は、環の反転に伴い、次の表のように置換基のアキシャルとエカトリアルが入れ替わるから、下図のようになる。
置換基 | 反転前 1 | 反転後 2 | |||
---|---|---|---|---|---|
光学異性体 A | 1-chloro group 環の上 |
エカトリアル | アキシャル | ||
2-methyl group 環の下 | エカトリアル | アキシャル | |||
立体ひずみ due to (upper) 1,3-diaxial, and (lower) gauche* interactions, respectively. | 0 kJ/mol | 1.0 kJ/mol × 2 + 3.8 kJ/mol × 2 | |||
1.0 kJ/mol | 0 kJ/mol | ||||
光学異性体 A と B は、環の反転では入れ替わらない。 | |||||
光学異性体 B | 1-chloro group 環の下 |
アキシャル | エカトリアル | ||
2-methyl group 環の上 | アキシャル | エカトリアル | |||
立体ひずみ due to (upper) 1,3-diaxial, and (lower) gauche* interactions, respectively. | 1.0 kJ/mol × 2 + 3.8 kJ/mol × 2 | 0 kJ/mol | |||
0 kJ/mol | 1.0 kJ/mol |
(解答例)
都合上(教科書(下)での、糖類の構造式と一致させる目的で)、ここでは教科書とはガラクトースの絵を左右反転して示している。また、環の命名法とは異なった規則により(酸素には番号を振らずに)炭素骨格に1〜6の番号を振っている。
赤で示した水酸基はアキシャルに、それ以外の置換基はすべてエカトリアルにくるようにする。
このような条件を満たすものは、以下の2通りが考えられる。いずれも正解である。
左右の2つは互いに光学異性体の関係にある。下の表を見よ。酸素の位置を好きな位置においたとしても、それぞれの置換基の結合方向が環に対して上か下かで分類すると、この2種類のいずれかと同じであることが判るはずである。なお、天然に多く存在しているのは、青い破線よりも右側の構造のものである。
左の立体異性体(L体) | 右の立体異性体(D体) | |
---|---|---|
1位 ヒドロキシ基 | 下 | 上 |
2位 ヒドロキシ基 | 上 | 下 |
3位 ヒドロキシ基 | 下 | 上 |
4位 ヒドロキシ基 | 下 | 上 |
5位 ヒドロキシメチル基 | 下 | 上 |
(解答例)
可能な2つのいす型配座を書くと次のようになる。ただし、環の番号を振る回り方とそれぞれの置換基が結合する方向(上下)は、入れ替わらないように書いてあることに注意せよ。
すべての置換基がエカトリアル位にくる方のいす型配座(下図、右)の方が安定である。
1-hydroxy | 上 | 上 |
アキシャル | エカトリアル | |
2.1 kJ/mol*1 > 3.8 kJ/mol*2 | > 2.1 kJ/mol*5 | |
2-isopropyl | 下 | 下 |
アキシャル | エカトリアル | |
2 × 4.6 kJ/mol*3 | − | |
5-methyl | 上 | 上 |
アキシャル | エカトリアル | |
3.8 kJ/mol*4 | − | |
strain | > 18.9 kJ/mol | > 2.1 kJ/mol |
(解答例)
以下の表のとおり。一番右のカラムが、エネルギーの高い状態、すなわち置換基がアキシャル位にくるものが全体に占める割合。
substituent | strain due to 1,3-diaxial interaction, ΔE | e( ΔE / RT ) |
| |||||||||
(a) R = CH(CH3)2 | 2 × 4.6 kJ/mol | 39.7 | 2.5 % | |||||||||
(b) R = F | 2 × 0.5 kJ/mol | 1.5 | 40 % | |||||||||
(c) R = CN | 2 × 0.4 kJ/mol | 1.4 | 42 % | |||||||||
(d) R = OH | 2 × 2.1 kJ/mol | 5.4 | 16 % |
(解答例)
(a) 一方はアキシャルで、もう一方はエカトリアル。
(b) 一方はアキシャルで、もう一方はエカトリアル。
(c) 両方ともアキシャル、または、両方ともエカトリアル。
(d) 一方はアキシャルで、もう一方はエカトリアル。
(e) 両方ともアキシャル、または、両方ともエカトリアル。
(f) 両方ともアキシャル、または、両方ともエカトリアル。
(解答例)
図左のジエカトリアル配座は、1,3-ジアキシャル相互作用によるひずみを持たないのに対し、図右のジアキシャル配座では、水素−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用が2組と、メチル−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用をあわせもつため、おおきなひずみエネルギーを持つ。
(解答例)
1,3-dimethylcyclohexane のジアキシャル配座では、4.43 の解答例で描いた図のように、水素−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用が2組(青、矢印)と、メチル−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用(青、太い矢印)とがある。水素−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用は、一組につき 3.8 kJ/mol であるから、以下の計算により、メチル−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用の大きさが求められる。
23 kJ/mol − ( 2 × 3.8 kJ/mol ) = 15.4 kJ/mol
なお、この値は、t-butyl 基( -C(CH3)3 )と水素の間の 1,3-ジアキシャル相互作用よりも大きいことがわかる。
(解答例)
下図は、4.43 の解答例( 1,3-dimethylcyclohexane のもの)とも見比べてみること。
図からあきらかなように、1,1,3-trimethylcyclohexane は、3位のメチル基がエカトリアル位にあるいす形配座と、3位のメチル基がアキシャル位にあるいす形配座とがある。
3位のメチル基がエカトリアル位にあるもの
2組の水素−メチル基間の 1,3-ジアキシャル相互作用があるため、ひずみエネルギーは、
2 × 3.8 kJ/mol = 7.6 kJ/mol である。
3位のメチル基がアキシャル位にあるもの
2組の水素−メチル基間の 1,3-ジアキシャル相互作用、および
メチル基−メチル基間の 1,3-ジアキシャル相互作用があるため、ひずみエネルギーは、
2 × 3.8 kJ/mol + 15.4 kJ/mol = 23.0 kJ/mol である。
これら2つの配座で比較すると、3位のメチル基がエカトリアル位にある方がより安定である。また、これらの間のエネルギー差 ΔE は、15.4 kJ/mol であるから、4.41 と同様の計算を行うと、より不安定な配座である3位のメチル基がアキシャル位にある方の配座は全体の中の 0.21 % を占めるに過ぎないことが求められる。
(解答例)
シス−トランス異性体(立体配置異性体)は、以下の2種類のみが存在する。
いす形配座-1 | ||
0 kJ/mol | 2 × 3.8 kJ/mol = 7.6 kJ/mol | |
いす形配座-2 | ||
3 × 15.4 kJ/mol = 46.2 kJ/mol | 2 × 3.8 kJ/mol + 1 × 15.4 kJ/mol = 23.0 kJ/mol |
(解答例)
trans-decaline は分子内に 1,3-ジアキシャル相互作用を持たないが、cis-decaline では、黒で描いたシクロヘキサンから結合している青の環を構成している CH2 のように、アキシャル位にくる置換基があるとみなせるから、アキシャル水素との間に 1,3-ジアキシャル相互作用を持つ。
黒で描いた環を中心に考えると、アキシャル位の青い CH2 −ピンク水素の2組の 1,3-ジアキシャル相互作用が、また、青で描いた環を中心に考えても同じようにアキシャル位の黒い CH2 −緑の水素の2組の 1,3-ジアキシャル相互作用がある。ところで、図からわかるようにひとつは重複して数えているからこれを考慮すると、総合して3組の 1,3-ジアキシャル相互作用がある(下の写真を用いた解説も参照してください)ので、
3 × 3.8 kJ/mol = 11.4 kJ/mol の 1,3-ジアキシャル相互作用に由来するひずみエネルギーをもつ。
trans-decaline
cis-decaline
橋頭位の水素は赤い結合で表した。
シスデカリンの3組の1、3−ジアキシャル相互作用について、分子模型写真を用いて以下に説明します。
シスデカリンの分子模型。 | 床についているシクロヘキサン環に対し、アキシャル方向の置換基(もうひとつの環の一部)を、赤で示した。このアルキル基について、赤矢印で示したような 1、3-ジアキシャル相互作用が存在する。 |
上段の右写真を90度左に回転させた。 | もうひとつのシクロヘキサン環に対し、アキシャル方向の置換基(はじめの環の一部)を、青で示した。このアルキル基について、青矢印で示したような 1、3-ジアキシャル相互作用が存在する。 |
中段の右写真の矢印を、水素間の線で描き直すとこうなります。 | 別の視点から見たもの。 |
(解答例)
trans-decaline
青で示した方の環を構成する2つのメチレン( -CH2- )(青C3、青C6)がともに黒のシクロヘキサン環のアキシャル位にあるとき、残り2つの炭素(青C4、青C5)だけではこの2つのメチレンの間をつなぐことができない。(結合角が109.5度であることを思い出すこと。)
従って、トランスデカリンの一方のシクロヘキサン環に接した2つのメチレンは必ずともにエカトリアル位になければならない。このため、反転することができない。
cis-decaline
シスデカリンは図のように容易に反転させることが可能である。
(解答例)
左はcis-bicyclo[4.1.0]heptane について、右はtrans-bicyclo[4.1.0]heptane について描いたものである。
まずシクロヘキサン部分をいす形にした配座で描く(上段)と、C1-C6 軸に沿って見た時、この2つの炭素から出ている置換基はねじれ型になることになる。ところが、C1 と C6 の両方から C7 のメチレンへ結合しているから、青で描いた矢印のような回転(C1-C6 軸のまわりのねじれ)により、重なり形配座になる必要がある。
cis-bicyclo[4.1.0]heptane では、配座をいす形から舟形(左、中段)にしたり、下段のような配座など、比較的安定な配座を考えることができる。
ところが、trans-bicyclo[4.1.0]heptane では、C1-C6 軸について重なり形をとったときに、C2-C1-C6-C5 の二面角が120度となってしまうため、環に非常に大きなひずみが生じる。
このため、bicyclo[4.1.0]heptane は、トランス体よりもシス体の方が安定である。
次に、PM3法で安定化した分子模型を3次元モデルで示す。上の Newman 投影図と対応させながら立体的な様子を確認してください。なお、マウスを3次元モデル上でドラッグ等することにより、回転させて確認することが可能です。
シス体
トランス体
(解答例)
問題文は「ヘキサクロロシクロヘキサンでしたが、以下において、数値はすべて「ヘキサメチルシクロヘキサン」として求めています。歪みエネルギーの数値は異なりますが、異性体の数、および相対的な安定性についての結論は同じとなります。
立体配置異性体は、8種類が考えられる。このうち、一番安定なものは、図一番下のようにメチル基がシクロヘキサン環に対して上下上下上下となっている、すべての隣りあうメチル基がトランスとなっているもので、メチル基がすべてエカトリアル位に結合したいす形配座をとる。
立体配置 | 立体配座 | |||
---|---|---|---|---|
いす形配座−1 | いす形配座−2 | |||
1,3-diaxial interaction | gauche interaction | 1,3-diaxial interaction | gauche interaction | |
steric strain | steric strain | |||
3 × 15.4 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | 3 × 15.4 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | |
69.0 kJ/mol | 69.0 kJ/mol | |||
1 × 15.4 kJ/mol + 2 × 3.8 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | 3 × 15.4 kJ/mol + 2 × 3.8 kJ/mol | 4 × 3.8 kJ/mol | |
45.8 kJ/mol | 65.2 kJ/mol | |||
1 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 5 × 3.8 kJ/mol | 1 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 5 × 3.8 kJ/mol | |
49.6 kJ/mol | 49.6 kJ/mol | |||
2 × 3.8 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | 4 × 15.4 kJ/mol + 2 × 3.8 kJ/mol | 2 × 3.8 kJ/mol | |
30.8 kJ/mol | 76.8 kJ/mol | |||
1 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 4 × 3.8 kJ/mol | 1 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 4 × 3.8 kJ/mol | |
45.8 kJ/mol | 45.8 kJ/mol | |||
4 × 3.8 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | 2 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 4 × 3.8 kJ/mol | |
38.0 kJ/mol | 61.2 kJ/mol | |||
光学異性体が存在する | ||||
2 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 3 × 3.8 kJ/mol | 4 × 3.8 kJ/mol | 5 × 3.8 kJ/mol | |
57.4 kJ/mol | 34.2 kJ/mol | |||
0.0 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | 6 × 15.4 kJ/mol | 0.0 kJ/mol | |
22.8 kJ/mol | 92.4 kJ/mol |
(解答例)
ねじれ形配座においては gauche 相互作用の和が、重なり形配座においては3箇所の重なり形相互作用の和が、それぞれのひずみエネルギーとなる。
ねじれ形 | 重なり形 | |||
---|---|---|---|---|
(a) | ||||
3.8 kJ/mol | 7.6 kJ/mol | 18.0 kJ/mol | 21.0 kJ/mol | |
(b) | ||||
7.6 kJ/mol | 23.0 kJ/mol | |||
(c) | ||||
7.6 kJ/mol | 11.4 kJ/mol | 23.0 kJ/mol | 26.0 kJ/mol | |
(d) | ||||
15.2 kJ/mol | 28.0 kJ/mol |
(解答例)
のように番号を振るとする。
置換基 | 立体配座−1 | 立体配座−2 | |
---|---|---|---|
1-OH | 上 | エカトリアル | アキシャル |
2-OH | 上 | アキシャル | エカトリアル |
3-OH | 上 | エカトリアル | アキシャル |
4-OH | 下 | エカトリアル | アキシャル |
5-OH | 上 | エカトリアル | アキシャル |
6-OH | 下 | エカトリアル | アキシャル |
(解答例)
いす形配座においては、cis-1,3- 位の2つの置換基は、ジエカトリアルまたはジアキシャルの位置にくる。より安定な配座においては、ジエカトリアルなので、分子内にひずみの原因となるような相互作用はない。したがって、2つの置換基がジアキシャルにあるときの、3つの 1,3-ジアキシャル相互作用(メチル基と水素、塩素と水素、メチル基と塩素)の和が安定性の差、15.5 kJ/mol である。
メチル基と水素、塩素と水素の 1,3-ジアキシャル相互作用は、表 4.2 より、3.8 kJ/mol、1.0 kJ/mol であるから、メチル基と塩素の間の 1,3-ジアキシャル相互作用の大きさは、
15.5 − ( 3.8 + 1.0 ) = 10.7 kJ/mol である。
(解答例)
1-norbornene の二重結合の周囲のみとり出してみると、次図のようになる。すなわち、二重結合はおよそ 90度ねじれており、2つの炭素の p 軌道もほぼ直交している。このため、軌道の重なりがないため、安定な二重結合とならない。
(解答例)
図のようになるので、
(a) エカトリアル
(b) アキシャル
(c) エカトリアル
(解答例)
(発展)
(解答例)
tert-butyl 基がアキシャル位を占めたときの水素との 1,3-ジアキシャル相互作用は1組につき 11.4 kJ/mol あるのに対し、塩素がアキシャル位を占めたときの水素との 1,3-ジアキシャル相互作用は1組につき 1.0 kJ/mol である。
このため、cis-1-tert-butyl-2-chlorocyclohexane のように、2つの置換基のうちどちらかがアキシャル位、どちらかがエカトリアル位を占めるような立体配置異性体においては、tert-butyl 基がエカトリアル位にある方が、もう一方に対して 20.8 kJ/mol だけ安定である。これは、ボルツマン分布から考えて、300 K の温度では、 99.98 % の分子でtert-butyl 基がエカトリアル位にあり、塩素がアキシャル位にあることを示す。
trans-1-tert-butyl-2-chlorocyclohexane では2つの置換基がともにエカトリアルになることができ、ジアキシャル体に対し 24.8 kJ/mol だけ安定である。これは、ボルツマン分布から考えて、300 K の温度では、 99.99 % 以上の分子でtert-butyl 基、塩素ともにエカトリアル位にあることを示す。
従って、ほとんどの分子において塩素がアキシャル位にあるcis-体で、より速く脱離反応を示す。
(解答例)
常にエカトリアル位にくる、4位のtert-butyl 基の「上下」を、環の下であるような形に固定して考えることにする。(1位、もしくは 3位の水酸基を固定して考えても、もちろん構わない。ただし、その場合は、常に 4位のtert-butyl 基をエカトリアル位にくるように、適宜、環の反転をおこなってやりながらいす形配座を描くこと。)
この立体異性体(3つの置換基がすべて同じ方向(下方)を向いているもの。教科書の図と同じ立体異性体。ただし、教科書の図(3つがすべて環の上方にある)とは光学異性体の関係にあるものである。)は、アセタールになり、酸素を2つ含んだ6員環をとることができる。
ここに示した3つの立体配置異性体では、水酸基の酸素の間の距離が遠すぎるから、アセタールになることはできない。