(解答例)
官能基(その官能基をもつ一般名)の順で示す。
(a) methionine, (IUPAC名:2-amino-4-(methylsulfanyl)butanoic acid)
緑丸:スルフィド結合(スルフィド)。短いほうのアルキル基であるメチル基も含めた次の部分、CH3-S- は、メチルチオ基、またはメチルスルファニル基ということができる。(発展の項を参照)
ピンク丸:アミノ基(アミン)
茶四角:カルボキシ基(カルボン酸)
青丸:カルボニル基、付け根の炭素を除いて =O のみで言う場合は、オキソ基。このカルボニル基はカルボキシ基の一部なのでわざわざ指摘する必要は無い。
(b) ibuprofen, (IUPAC名:2-(4-isobutylphenyl)propanoic acid)
黄四角:芳香環(芳香族化合物、アレーン)
茶四角:カルボキシ基(カルボン酸)
青丸:カルボニル基、付け根の炭素を除いて =O のみで言う場合は、オキソ基。このカルボニル基はカルボキシ基の一部なのでわざわざ指摘する必要は無い。
(c) capsaicin, (IUPAC名:N-(4-hydroxy-3-methoxybenzyl)-8-methylnon-6-enamide)
橙丸:エーテル結合(エーテル)。短いほうのアルキル基であるメチル基も含めた次の部分、CH3-O- は、メチルオキシ基、またはメトキシ基ということもできる。
黄緑丸:水酸基、または、ヒドロキシ基(フェノール)。水酸基がアルカンに結合している場合はアルコールだが、芳香環に結合している場合はフェノールである。(狭義では、ベンゼン環上に水酸基をもつ C6H5-OH がフェノール(化合物の名称)であるが、広義では、芳香環上に水酸基をもつ Ar-OH も一般にフェノール(化合物群の名称)と総称することがある。区別のため、後者をフェノール類という言い方をする人もいる。)
黄四角:芳香環(芳香族化合物、アレーン)
紫四角:アミド結合(酸アミド)
青丸:カルボニル基、付け根の炭素を除いて =O のみで言う場合は、オキソ基。このカルボニル基はカルボキシ基の一部なので、わざわざ官能基として取り上げる必要は無い。
赤丸:二重結合(アルケン)
(発展)
硫黄の単核水素化合物、SH2 を「スルファン、sulfane」として誘導すると、メチルチオ基 CH3-S- は、メチルスルファニル基であるという言い方になる。
IUPAC 1979 では、アルキルチオ基という言い方が、IUPAC 1993 では アルキルスルファニル基という言い方を推奨しているとのこと。
参考:(外部リンク)「化合物命名法談義(メニュー)」より、「カルコゲンの置換基」
http://homepage1.nifty.com/nomenclator/text/chalco.htm
(発展2)
カルボキシ基とカルボキシル基
カルボン酸を与えるような官能基 -CO2H を、カルボキシ基という。現在、ウェブ上や、教科書等においては、カルボキシル基と表記されることもありますが、IUPACの1993年勧告で、カルボキシル基という表現は廃止されたそうです。従って、皆さんは「カルボキシ基」という表記が正しい(または、好ましい)という認識を持っていてください。(たとえば「but-2-ene」表記することが推奨されている化合物について、まだ 「2-butene」という表記が多々見られるようなものです。カルボキシル基が間違いとまでは言えないところでしょう。)
また、これは、水酸基(ヒドロキシ基)についても同様です。以前は、ヒドロキシル基という表記をしていましたが、IUPACの1993年勧告で、ヒドロキシル基という表現は廃止となっています。
(解答例)
示された官能基を持つような分子には、さまざまなものがある。ここでは、その中の数例のみを示す。
(a) CH3OH(メタノール)
他にエタノール、プロパノールなども可。
(b) 下図(左はベンゼン、右はナフタレン)
(c) CH3CO2H(エタン酸(慣用名:酢酸))
他にもメタン酸(慣用名:ギ酸)、プロパン酸なども可。
(d) CH3NH2(メチルアミン)、(CH3)NH
2(ジメチルアミン)
(e) CH3COCH2NH2(1-アミノ-2-プロパノン):下図左。
「ケトン」であるためには、カルボニル基に2つのアルキル基が結合していなければならない。図右の CH3CONH2(エタンアミド(慣用名:アセトアミド))は、1-アミノ-2-プロパノンよりも更に単純な構造であるが、カルボニル基(C=O)に結合している一方がアルキル基ではないので、ケトンではない。
また「アミン」であるためには、窒素上の3つの置換基が、水素またはアルキル基である必要がある。図右のエタンアミドでは、窒素に結合しているのがアルキル基ではないので、アミンでもない。(アルキル基が1つ結合したカルボニル基、RC(=O)-は、まとめてアシル基と呼ばれる。)
(f) CH2=CH-CH=CH2(1,3-ブタジエン):
下図右(1,3-シクロヘキサジエン)や、CH2=C=CH2(1,2-プロパジエン)などでも良い。
注意:「官能基」としての「二重結合」が指すのは、一般的に炭素炭素の間の二重結合に限定される。したがって、二酸化炭素 O=C=O の様な例は、不正解とする。また、ベンゼン C6H6 も3つの炭素炭素二重結合を持つが、芳香環の中の二重結合は、個別の炭素炭素二重結合とは異なる挙動を示すために「芳香族化合物」は「アルケン」とは別の一群に分類されている。そのため、この問いの答えとしてベンゼンを示すことは、あまり良い例とはいえない。
(発展)
アミン類の命名もそうとうややこしい。CH3NH2 は、methylazane, methanamine, methylamine のいずれも正しい。(CH3)NH
2 は、dimethylazane, dimethylamine などとなる。
参考:(外部リンク)「化合物命名法談義(メニュー)」より、「アミンとイミン」
http://homepage1.nifty.com/nomenclator/text/amine.htm
(解答例)
構造式は上図。分子式は、C8H13NO2 となる。
アレコリン arecoline に含まれる3つの官能基を次に示す。
(3級の)アミノ基
二重結合
エステル結合(または、アルコキシカルボニル基)
なお、アレコリンのIUPAC名は、この分子構造中ではエステルが最も優先される官能基であるから、 methyl 1-methyl-1,2,5,6-tetrahydropyridine-3-carboxylate である。
(解答例)
なお、名称は次の通り
hexane,
2-methylpentane, 3-methylpentane,
2,2-dimethylbutane, 2,3-dimethylbutane
(発展)
不飽和度0であるアルカンの骨格構造式の探し方
主鎖が長い順に場合を尽くしながら探す。CnH2n+2 のとき
(解答例)
(a) 以下9種のうちより書く。
methyl butanoate,
ethyl propanoate,
propyl acetate,
methyl 2-methylpropanoate,
isopropyl acetate
上図、左2つは、C4カルボン酸のメチルエステル。
中央は、C3カルボン酸のエチルエステル。
右2つは、C2カルボン酸のプロピルエステル。プロピル基には2つの構造異性体がある。
下図は、C1カルボン酸のブチルエステル。ブチル基には4つの構造異性体がある。
butyl formate,
sec-butyl formate
isobutyl formate
tert-butyl formate
(b) プロパンの異なる位置にシアノ基が置換した構造は、以下の2つ。
butanenitrile,
2-methylpropanenitrile
構造を探す目的では「プロパン」の水素を「シアノ基で置換」しているが、命名においては、シアノ基の炭素も含んだ主鎖で命名していることに注意する。
(c) ジスルフィド結合を持つ構造は、4つの炭素を左右で分配するから、以下の中から書く。
モノアルキルジスルフィドとして、以下の4種類。
左より
n-butyl hydrodisulfide (または、butyldisulfane),
sec-butyl hydrodisulfide (または、(1-methylpropyl)disulfane),
isobutyl hydrodisulfide (または、(2-methylpropyl)disulfane),
tert-butyl hydrodisulfide (または、(1,1-dimethylethyl)disulfane)
ジアルキルジスルフィドとして、以下の3種類。
左より
methyl propyl disulfide (または、1-(methyldisulfanyl)propane),
isopropyl methyl disulfide (または、2-(methyldisulfanyl)propane),
diethyl disulfide (または、ethyldisulfanylethane)
(発展)
イソプロピル基、イソブチル基等について
一般に、iso は、英語では「同じ」「等しい」を表す連結語であり、isotope(同位体)など、「同」「等」の漢字に置き換えられることもあるが、「isopropyl」「isobutyl」といった単語は、「iso」と「propyl」に分離してそのような訳を与えるようなことはなく不可分であり、単に「イソプロピル」「イソブチル」などとなる。
命名においてアルファベット順を考慮する際は、倍数接頭語や、位置を表す数字や記号などが無視されるのとは異なり、これらの置換基は i から始まるひとつの単語として数える。
これらは、教科書p80からの§3.3にあるように、アルキル基(アルカンより、水素を1つ除いたもの)のうちの異性体の1つに与えられる慣用名である。
共通した構造を見るに、末端よりひとつ内側の炭素にメチル基が置換した形(先端が、Yの字のような形に分岐している形)である。
イソプロピル、イソブチルが許されるのなら、同様に、すべてのアルキル基に対して、同様の分岐構造を持つ異性体に、イソアルキル基と表現できるのかというと、そうでもない。IUPACで許容されている慣用名の中に、isopropyl, isobutyl, isopentyl, isohexyl までは見当たるが、それ以上の炭素数のイソアルキル基は無い。つまり、isoheptyl基、isooctyl基などと表現すると、IUPACの規則上、誤りであるということになる。(isooctane は許容された慣用名であるが、イソブタン( Me2CHCH3 )、イソペンタン( Me2CHCH2CH3 )、イソへキサン( Me2CHCH2CH2CH3 )から類推されるのとは異なり、イソオクタンの構造は、Me2CHCH2CMe3 である。
すなわち、「命名法において「iso」という接頭語は、同じ炭素数のアルカンやアルキル基の末端が、−CHMe2 の構造を持つもの」という一般的な表現は、誤りである。
(一般的に「isoなんたら」がどういう構造であるという規則を述べることはできない。ただ、許容されている例をみてください、としか言えない。)
(解答例)
(a) プロパン C3H8 には、骨格異性体は存在しない。その内の一つの水素を水酸基に置き換えたものは、次図の通り2種である。
1-propanol,
2-propanol
(b) ブタン C4H10 には、骨格異性体は2種存在する。それぞれの一つの水素を臭素に置き換えたものは、次図の通り4種である。
1-bromobutane,
2-bromobutane,
1-bromo-2-methylpropane,
2-bromo-2-methylpropane
(解答例)
ペンタン C5H12 には、骨格異性体は3種存在する。それぞれの一つの水素を取り除きアルキル基としたものは、次図の通り8種である。
アルキル基の名称は以下の通り
pentyl,*1
1-methylbutyl,
1-ethylpropyl,
2-methylbutyl,
1,1-dimethylpropyl,*2
1,2-dimethylpropyl,
3-methylbutyl,*3
2,2-dimethylpropyl*4
註:
*1 「 n- 」をつけて直鎖アルキルであることを示しても良い。(例:n-pentyl )
*2 慣用名では、 tert-pentyl
*3 慣用名では、 isopentyl
*4 慣用名では、 neopentyl
(炭素5のアルキル基で慣用名が許されるのは上記3種のみ。また、これらのアルキル基の慣用名称は、その誘導体を作ることを許さない。( phenyl基( −C6H5 )からはその誘導体として例えば 2-chlorophenyl 基を作ることができるが、chloroisopentyl 基などのような複合的な名称の部分として用いることはできない。))
(解答例)
骨格構造で示された図中の炭素原子のうち、赤で囲んだものが1級、青で囲んだものが2級、緑で囲んだものが3級、黄で囲んだものが4級である。
(a)
(b)
(c)
(解答例)
3.08 の解答で第1級炭素に結合した水素が第1級水素、第2級炭素に結合した水素が第2級水素、第3級炭素に結合した水素が第3級水素である。第4級炭素は4本のC−C結合を持ち水素と結合しないから、第4級水素というものは存在しない。
構造式との対応については、3.08 の解答例を参照。
(解答例)
以下には、いくつかの例を示すが、かならず、問題 3.08 と同様の方法等で、自分の書いた構造が条件を満たしているかどうかを確認すること。
図のうち、左端のものが最低の炭素数で与えたもの。ただし(b)については下の解説を参照すること。また図の中あるいは右は指定されていない級数の炭素を追加したもの。これらでも条件を満たしているので正解としてよい。
(a)
2,3-dimethylbutane,
2,4-dimethylpentane
(b)
2-methylpropane,
3-ethyl-2-methylpentane,
4-isopropylheptane*1
(c)
2,2-dimethylbutane,
2,2,4-trimethylpentane
(b) 左端の分子は、置換基(イソプロピル基)を中心に考えると、その置換基が母核としてのメタンに付いていることになり(すなわち、
なお、シクロプロパンにイソプロピル基が置換したもの( isopropylcyclopropane )が、アルカンおよびシクロアルカンの中で、イソプロピル基を名称の中に含む最低の分子である。その他、分子内に二重結合や他の置換基がある場合も命名上で元となる主鎖として一番長い炭素鎖以外が選ばれる場合があり、少ない炭素数のものでもイソプロピル基を置換基として命名することになることもある。(例:2-isopropyl-1,3-butadiene )
註 *1 isopropyl基は慣用名で、システム的な名称では 1-methylethyl基となる。したがってこの分子は
註 *2 教科書p83 命名規則 段階1 b) 「長さの等しい二つの違った炭素鎖が存在する場合は、母体になるべく多くの分枝点があるものを選ぶ」より、中央の 3-ethyl-2-methylpentane について、 3-isopropylpentane と命名するのは誤りである。
(解答例)
(a)
pentane,
2-methylbutane,
2,2-dimethylpropane
(b) 〜 (d) では、問題文中で同じ行内で書かれている部分を黄色の背景で示した。これらの構造の中で一番長い炭素鎖は、赤で示された部分(他の等価な取り方があるものもある)である。
(b)
2,3-dimethylpentane
(c)
2,4-dimethylpentane
(d)
2,2,5-trimethylhexane
(発展)
化合物名については、授業でも説明したように英語で正しく表記できるようになること。これは、英語 → 日本語の変換は比較的簡単であるのに対し、日本語での表記しか覚えていない場合に英語に直すことができないばかりか、命名の規則中にアルファベット順といった制約があり、これは英語のスペルを知らないと対応できないからである。
また、複雑な化合物の命名については、単純なアルカンの命名に優先する規則がある。(授業でやったとおり。)教科書下巻、巻末付録Aを参照すること。その概要を以下にまとめておくが、これを先に概観しておくとよい。
註)出典は「有機化合物 命名法の手引き」(化学同人、1990年)ISBN 4-7598-0205-3
このルールによれば、次の化合物は
炭素数7の主鎖を2通り選べるが、側鎖の数はいずれも3で等しい。側鎖の位置もいずれも3、4、5位で等しい。従ってこのルールの適用となる。一方の選び方では、側鎖の炭素数が(1、1、5)であるのに対し、もう一方の選び方では側鎖の炭素数が(1、2、4)となる。そこで、2番目に小さい側鎖の炭素原子数で差がみられたので、ここでより大きい後者を選ぶ。すなわち、
× 4-(1-ethylpropyl)-3,5-dimethylheptane
○ 3-ethyl-5-methyl-4-(1-methylpropyl)heptane
ということになる。なお、(1-methylpropyl) 基の慣用名は sec-butyl 基である。
なお、市販の化学構造式描画ソフトである ChemBioDraw や、個人使用は課金なしで使用できる SymyxDraw などでは、構造式を書いて名前を表示させる機能がついているが、必ずしも正確ではない。以下は(書き方が異なるだけで)同じ分子に対し、この命名機能を用いたときに2通りの名前が表示されている例。(上記ルールによれば、図上方の命名は間違いで、図下方の命名が正しい。)
(解答例)
下図の通り。なお、下図において主鎖の炭素の左から右へ番号を振るように示した。
(a)
(b)
(c)
(d)
(解答例)
(3.07 の解答より 再掲)
アルキル基の名称は以下の通り
pentyl,*1
1-methylbutyl,
1-ethylpropyl,
2-methylbutyl,
1,1-dimethylpropyl,*2
1,2-dimethylpropyl,
3-methylbutyl,*3
2,2-dimethylpropyl*4
註:
*1 「 n- 」をつけて直鎖アルキルであることを示しても良い。(例:n-pentyl )
*2 慣用名では、 tert-pentyl
*3 慣用名では、 isopentyl
*4 慣用名では、 neopentyl
(解答例)
骨格構造式は、左図のようになる。
主鎖は炭素数7のヘプタンに4つのメチル基が置換している。番号は図の右から振ると 3,4,5,5- となるが、左から振ると 3,3,4,5- となり(初めの数字は3で同じだが、2番目の数字が4と3で比べて)より小さくなる。
3,3,4,5-tetramethylheptane
(解答例)
(解答例)
青で示した結合軸が手前から向こうに重なるように視点を取る。
(a) 最も安定な配座は、ねじれ形配座の中のひとつである。2-メチルプロパンでは、回転角をかえて書いたねじれ形配座は次の3つとなるが、このエネルギーはいずれも等しく、不安定化を招く相互作用はゼロである。
(b) 最も不安定な配座は、重なり形配座の中のひとつである。2-メチルプロパンでは、回転角をかえて書いた重なり形配座は次の3つとなるが、このエネルギーはいずれも等しい。(重なり型相互作用の値については、ヒントの (3) を参照のこと)
(c) (d) グラフの概形および、その極大、極小点のエネルギーの相対値は次のグラフの通り。
(解答例)
青で示した結合軸が手前から向こうに重なるように視点を取る。
(a) 最も安定な配座は、ねじれ形配座の中のひとつである。2,3-ジメチルプロパンでは、回転角をかえて書いたねじれ形配座は次の3つとなる。
左のものでは、Gauche 相互作用が2箇所、中央および右のものでは、Gauche 相互作用が3箇所存在する。従って、左のものが一番安定な配座である。
(b) 最も不安定な配座は、重なり形配座の中のひとつである。2,3-ジメチルプロパンでは、回転角をかえて書いた重なり形配座は次の3つとなる。
中央のものは、2組のメチル−メチルの重なり相互作用(11.0 kJ/mol)と、水素−水素の重なり相互作用(4.0 kJ/mol)を持つ。左右の2つは、1組のメチル−メチルの重なり相互作用と、2組の水素−メチルの重なり相互作用(6.0 kJ/mol)をもつ。
以上を考慮すると、中央のものが一番不安定な立体配座である。
(解答例)
上図のようになり、3組のメチル−メチルの Gauche 相互作用によるひずみエネルギーがあるから、全ひずみエネルギーは、
3.8 kJ/mol × 3 = 11.4 kJ/mol
である。
(解答例)
官能基名に続くカッコ内は、その官能基を持つ化合物の一般名。
(a) phenylalanine, C9H11O2N
芳香環(アレーン):赤
アミノ基(アミン):緑
カルボキシ基(カルボン酸):青
(b) lidocaine (リドカイン), C14H22ON2
芳香環(アレーン):赤
アミン窒素(アミン):緑
アミド結合(カルボン酸アミド):桃
(発展)
lidocaine (リドカイン)のIUPAC名は、
2-diethylamino-N-(2,6-dimethylphenyl)acetamide である。番号の付け方は下図参照。(図中、黄色背景が命名上の母核となっている acetamide (または、ethanamide)である。
なお、大文字の N- は、炭素の位置番号に相当し、窒素上の置換基を表す。(枝分かれのないアルキル基である、小文字の n- とは異なるので注意。)
(解答例)
(a) 3,3,5-trimethylheptane
(b) 3-ethyl-2-methylpentane
(c) 2,2,4-trimethylpentane
(d) 2-methyl-4-(1-methylethyl)heptane (または、4-isopropyl-2-methylheptane)*
註*:側鎖置換基は、アルファベット順に並べる。IUPAC で使用の認められている慣用名イソプロピル基の "iso" と "propyl"の間にはハイフン区切りもなく、i で始まるひとつの単語として扱われる。そのため、同じ置換基でも、isopropyl基と表記するか、1-methylethyl基と表記するかによって、系統名上、並び順が変わることがある。
(解答例)
(a) (2-methylaminophenyl)methanol
または、2-(methylamino)benzyl alcohol (benzyl alcohol は、PhCH2OH の慣用名)
または、2-hydroxymethyl-N-methylaniline (aniline は、PhNH2 の慣用名)
芳香環(アレーン):赤
アミノ基(アミン):緑
水酸基(アルコール):黄
(b) cyclohex-2-en-1-one
二重結合(シクロアルケン):水色
カルボニル基(ケトン):橙
(c) N-phenylethanamide
または、 N-phenylacetamide
または、 acetoanilide
または、 acetylaminobenzene
芳香環(アレーン):赤
アミド結合(カルボン酸アミド):桃
(d) alanine (慣用名)
または、 2-aminopropanoic acid
アミノ基(アミン):緑
カルボキシ基(カルボン酸):青
(e) nootkatone (慣用名)
または、4,4a-dimethyl-6-(1-methylvinyl)-4,4a,5,6,7,8-hexahydro-3H-naphthalene-2-one *
または、 5,6-dimethyl-8-(1-methylvinyl)bicyclo[4.4.0]dec-1-ene-3-one
二重結合(シクロアルケン):水色
カルボニル基(ケトン):橙
(f) 4-methylpent-2-ynoyl chloride
三重結合(アルキン):紫
クロロカルボニル基(カルボン酸塩化物):茶
註*:「hydro」は、水素原子の付加を示す接頭語。hexahydrobenzene で cyclohexane のこと、decahydronaphthalene で decalin となる(デカリンの語末に e は無い)。
(発展)
なお、大文字の N- は、炭素の位置番号に相当し、窒素上の置換基を表す。(枝分かれのないアルキル基である、小文字の n- とは異なるので注意。)
(解答例)
以下の中から、指定された数を解答すればよい。ここでは、光学異性体を除いてすべての構造を挙げた(と思う)。
(a)
上より順に,
octane,
2-methylheptane,
3-methylheptane,
4-methylheptane,
2,2-dimethylhexane,
2,3-dimethylhexane,
2,4-dimethylhexane,
2,5-dimethylhexane,
3,3-dimethylhexane,
3,4-dimethylhexane,
3-ethylhexane,
2,2,3-trimethylpentane,
2,2,4-trimethylpentane,
2,3,3-trimethylpentane,
2,3,4-trimethylpentane,
3-ethyl-2-methylpentane,
3-ethyl-3-methylpentane,
2,2,3,3-tetramethylbutane
(b)
数が多いので、名称は省略。
(発展)
練習のために、なるべく全ての可能性を考えてみる。
(a) 異性体はすべてで18種類、存在する。
命名時の母体となる(分子内で連続した一番長い)炭素鎖数で分類すると、
8のもの 1種
7のもの 3種
6のもの 7種 (エチル基を持つもの1種を含む)
5のもの 6種 (エチル基を持つもの2種を含む)
4のもの 1種
が存在する。
(b) 異性体は159種類(数え間違いあったらごめんなさい)存在する。(二重結合の幾何(シス−トランス)異性体、環の立体配置(シス−トランス)異性体はともに別の構造として数え、光学異性体は区別しないものとする。)
官能基ごとに分類(カッコ内は分類した官能基以外の酸素の形態とする)すると、
カルボニル基を含むもの 17種類
カルボン酸 2種
エステル 4種
ケトン(水酸基) 3種
ケトン(エーテル結合) 1種
アルデヒド(水酸基) 5種
アルデヒド(エーテル結合) 2種
C=Cを含むもの48種類(幾何異性体21種を含めると69種類)
アルケン(水酸基×2) 18+8種
アルケン(エーテル結合+水酸基) 15+6種類
アルケン(エーテル結合×2) 3+1種類
アルケン(−OOR) 4+1種類
アルケン(−OOH) 8+3種類
環状構造のもの56種類(立体配置異性体17種を含めると73種類)
シクロアルカン(水酸基×2) 9+6種 (4員環(3+2)、3員環(6+4))
シクロアルカン(エーテル結合+水酸基) 3+1種
シクロアルカン(−OOR) 1種
シクロアルカン(−OOH) 4+1種
Oを1つ含む環(水酸基) 17+6種 (5員環(2)、4員環(7+3)、3員環(8+3))
Oを1つ含む環(エーテル結合) 6+1種
Oを2つ含む環 16+2種 (6員環(3)、5員環(4)、4員環(6+2)、3員環(3))
なお、(b) のような問題に対して、「すべての場合」を考えるためには、以下のようなアプローチがおそらく有用であろう。
(解答例)
上より順に,
heptane,
2-methylhexane,
3-methylhexane,
2,2-dimethylpentane,
2,3-dimethylpentane,
2,4-dimethylpentane,
3,3-dimethylpentane,
3-ethylpentane,
2,2,3-trimethylbutane
(解答例)
(a) 3つとも同じ構造である。
(b) 左の2つは同じ構造だが、右端は異なる。
(c) 右の2つは同じ構造だが、左端は異なる。
(a) 2-bromo-3-methylbutane
(b) 1,2-dihydroxybenzene と 1,3-dihydroxybenzene
(c) を骨格構造式に直すと、次図のようになる。
2-ethyl-4-methylpentanol と 2,4-dimethylhexanol
(解答例)
1-butanol,
2-butanol,
2-methyl-1-propanol,
2-methyl-2-propanol,
(n-butyl alohol,
sec-butyl alohol,
isobutyl alohol,
tert-butyl alohol,)
methyl propyl ether,
diethyl ether,
isopropyl methyl ether
(発展)
分子式を満たすような構造をとりあえず一つ書いてみなくても、不飽和度を求めてやれば、
C4H10O が、分子内に二重結合も環構造も全くもたない分子であることが判断できる。
なお、酸素は2本の結合を持つのだから、形式的には C−H 結合の間に酸素を挿入すれば、水素の数の増減なしに、たとえば アルカン R−H をアルコール R−O−H に変換することができてしまう。つまり、これはある分子式の分子のもつ不飽和度を判断するためには、酸素の数は全く無視して( C4H10O の代わりに C4H10 を用いて)アルカンの一般式にあてはめて考えて構わないことを示す。
(解答例)
以下の例のほか、(環状構造や)多重結合を持つものも解である。
(a) 以下の構造より、任意のひとつを答える。
上の図の下段は、同じカルボニル基を持つが、ケトンではなくアルデヒドなので問題の条件には合致しない。
(b) 以下の構造より、任意のひとつを答える。
なお、下図のうち、左端以外のような環状のアミド類は特に「ラクタム」と呼ばれることがある。(左端は、シクロアルキル基をもつ通常のアミド)
(c) 以下の構造より、任意のひとつを答える。
なお、下図のような環状のエステル類は「ラクトン」と呼ばれることがある。
(d) 例 benzaldehyde
ベンゼン環やナフタレン環にアルデヒド基 -CHO が直結したものを例として示せばよい。(Ph-CH2-CHO などのように、分子内に芳香環があったとしてもアルデヒド基の結合位置がアルキル基である場合、フェニル基をもつ脂肪族アルデヒドとして分類される。)
(e) 例 methyl 2-oxobutanate
右のような構造(R-CO-O-CO-R')は、酸無水物であり、ケトエステルではない。
(f) 例 2-aminoethanol
右のような構造(窒素上に水酸基が置換したもの)は、ヒドロキシルアミンである。
(発展)
(a) 炭化水素部分が飽和な構造のみを持つものを考えるものとする。
環構造を持たない異性体は、3種類存在する。
この全てを挙げるためには、C5H12 の骨格異性体すべてを考え、任意のメチレン (−CH2−)をカルボニル(−C(=O)−)に変える。
または、カルボニル基を中心におき、その左右に適当なアルキル基をその合計の炭素数が4となるように配す。
環状構造を持つものは、(立体配置異性体は除き、またシクロアルキル基を持つ1種類をふくめて)7種類存在する。
(b) 炭化水素部分が飽和な構造のみを持つものを考えるものとする。
窒素上にアルキル置換基を持たない(すなわち −CONH2 構造を持つもの)異性体は2種類存在し、窒素上にアルキル置換基を持つものでは、(メタンアミド、すなわちホルムアミド類も含めて)さらに6種類が存在する。
(c) 炭化水素部分が飽和な構造のみを持ち、環の構造を持たないもののみを考えるものとする。
メタン酸(すなわちギ酸)の誘導体も含めると、全部で9種類となる。
(解答例)
下に示す中より適当な構造を1つ示す。
(a)
2-butanone
n-butane を書き、ひとつの任意のメチレンをカルボニル C=O に変換すると、上図になる。末端の炭素をカルボニル基に変換するとアルデヒド(R-C(=O)H, または、R-CHO)になってしまうので、解答は上の1種類のみ。
(b)
pentanenitrile,
2-methylbutanenitrile,
2,2-dimethylpropanenitrile,
3-methylbutanenitrile
上図、左の2つは n-butane を書いて、任意の水素1つをシアノ基(-CN)に置き換えたもの。対称性の関係で2種類が書ける。右の2つは、2-methylpropane を書き、任意の水素1つをシアノ基に置き換えたもの。C4H10 の骨格異性体は2種類なので、C5H9CN (C4H9-CN)の構造は、上の4種類のみ。
(c)
butanedial,
2-methylpropanedial
エタン C2H6 を書き、任意の2つの水素をアルデヒド基(ホルミル基ともいう。-CHO)に置き換えたものとして考えることができる。
または、C4H10 の骨格異性体は2種類を書き、末端の位置の炭素2つをアルデヒド基に置き換えたもの、として考えても同じ結論になる。
(d)
非常に多くの構造が書けるので、いくつか例を示した。
5-bromo-2-hexene,
4-bromo-2-methyl-1-pentene,
5-bromo-3-methyl-2-pentene,
2-bromo-3,3-dimethyl-1-butene,
1-bromo-2,3-dimethyl-1-butene
すべての可能性を挙げるためには、次のように考えればよい。すなわち、
1) 臭素置換体の母核となる C6H12 の異性体は、C6H14 より派生させた13種類ある。
2) これらのそれぞれについて、任意の位置の水素を臭素に置換すると条件に合致した構造を書ける。
次図では、この13種類の構造異性体について、対称ではない水素の位置を赤い矢印で示した。この矢印の数だけ、条件を満たし、それぞれが異なった構造を書くことができる。
なお、これらの命名にあたっては、問い 3.11 の発展の項を参照すること。側鎖の位置の前に多重結合の位置で炭素鎖の番号が決定することに注意。
(e)
hexane,
2-methylpentane,
3-methylpentane,
2,2-dimethylbutane,
2,3-dimethylbutane
主鎖の長さが6のもの、5のもの、というようにすべてを尽くしながら書くとよい。
(f)
(上段)
cyclohexane,
methylcyclopentane,
1,1-dimethylcyclobutane,
1,2-dimethylcyclobutane,
1,3-dimethylcyclobutane,
ethylcyclobutane,
(下段)
1,1,2-trimethylcyclopropane,
1,2,3-trimethylcyclopropane,
1-ethyl-1-methylcyclopropane,
1-ethyl-2-methylcyclopropane,
propylcyclopropane,
(1-methylethyl)cyclopropane
環が、6員環、5員環、というようにすべてを尽くしながら書くとよい。
なお、1-methylethyl 基は isopropyl 基として命名してもよい。
(g)
penta-1,3-diene,
penta-1,4-diene,
2-methylbuta-1,3-diene,
penta-1,2-diene,
penta-2,3-diene,
3-methylbuta-1,2-diene
C5H12 の構造異性体(n-pentane、 2-methylbutane、2,2-dimethylpropane の3種類)を書き、出来上がる構造が重複しないように二重結合を2つ導入すると上図のようになる。なお、2,2-dimethylpropane は炭素の並びを変えずに二重結合を導入することはできない。
上の段、左端と右端に共通している部分構造( C=C-C=C )は「共役二重結合, conjugated double bond」と呼ばれる。
下の3つに共通している部分構造( C=C=C )は、「集積二重結合, cumulative double bond」と呼ばれ、この構造を持つ化合物を総称して「クムレン, cumulene」と呼ぶ。
最小のクムレンである propadiene, H2C=C=CH2の慣用名である「アレン, allene」を用い、その同族列名として「クムレン」の代わりに「アレン」が用いられることもある。
(h)
3-penten-2-one,
4-penten-2-one,
1-penten-3-one,
3-methyl-3-buten-2-one
まず、3.26 (a) と同様に考え、C5H10O の分子式を持つすべてのケトン(2-pentanone, 3-pentanone, 3-methyl-2-pentanone)の構造を書き、可能な位置に二重結合を導入すると、上の構造式が書ける。
(解答例)
(a) 以下の4通り。
左より、
butan-1-ol,
butan-2-ol,
2-methylpropan-1-ol,
2-methylpropan-2-ol
(b) 以下の17通り。
1級のアミン
2級のアミン
3級のアミン
ヒントを参照に、以下のように探してもよい。
(a),(f) これらのエーテルとアルコールは官能基異性体である。
(b) のヒント後半のように考えると、次図のようになる。
エーテル(青矢印側) 左
diethyl ether,
methyl propyl ether,
中 isopropyl methyl ether
アルコール(赤矢印側)
左 butan-1-ol,
中 butan-2-ol,
2-methylpropan-1-ol,
右 2-methylpropan-2-ol
(c),(d) これらのケトンとアルデヒドは官能基異性体である。
ヒント後半のように考えると、次図のようになる。
ケトン(青矢印側) 左 pentan-3-one,
pentan-2-one,
中 3-methylbutan-2-one
アルデヒド(赤矢印側) 左 pentanal,
中 2-methylbutanal,
3-methylbutanal,
右 2,2-dimethylpropanal
(e) 以下の4通り。
上段 メタン酸(methanoic acid)、慣用名:ギ酸(formic acid)のエステル。
左から、propyl formate,
isopropyl formate
中段 エタン酸(ethanoic acid)、慣用名:酢酸(acetic acid)のエステル。
ethyl acetate
下段 プロパン酸(propanoic acid)、慣用名:プロピオン酸(propionic acid)のエステル。
methyl propionate
(解答例)
条件に合致する構造は無限にあるから、以下、いくつかの例のみを示している。
(a) 水酸基が、第1級炭素に結合しているようなもの。
methanol,
ethanol,
propanol,
2,2-dimethyl-1-propanol
(b) シアノ基が、第3級炭素に結合しているようなもの。
2,2-dimethylpropanenitrile,
2-methyl-2-propylhexanenitrile,
(c) スルファニル基(メルカプト基、チオール基、−SH)が、第2級炭素に結合しているようなもの。
propane-2-thiol,
5-methyloctane-3-thiol,
2-methylcyclopentane-1-thiol,
bicyclo[2.2.2]octane-2-thiol
(d) 2つ(以上)の水酸基があり、それぞれ第1級および第2級炭素に結合しているようなもの。
1,2,3-propanetriol (glycerol),
2-hydroxymethyl-1-cyclopentanol,
glucose
(e) 化合物中の名称中にイソプロピル基が含まれるためには、以下の条件を満たす必要がある。イソプロピル基(炭素数3)が、それと炭素数が同じか、それより大きい炭素数のシクロアルカンに結合したもの。または、芳香環などに結合したもの。アミンの窒素上にイソプロピル基がある場合もありうる。
isopropylcyclopropane,
isopropylamine,
ethyl isopropyl ether,
isopropylbenzene
アルカンの一部としてイソプロピル基の構造を持つ場合は、主鎖の選び方により名称中にイソプロピル基が含まれない場合も生じるので、命名規則を参照すること。
2,3-dimethylpentane,
3-ethyl-2-methylhexane,
3-isopropyl-2-methylhexane
(f) 第4級炭素を1つ以上含むもの。
2,2-dimethylpropane,
2,2-dimethylpentane,
(解答例)
1-bromopentane,
2-bromopentane,
3-bromopentane
これ以外の C5H11Br
1-bromo-2-methylbutane,
2-bromo-2-methylbutane,
2-bromo-3-methylbutane,
1-bromo-3-methylbutane,
1-bromo-2,2-dimethylpropane
(解答例)
1-chloro-2,5-dimethylhexane,
2-chloro-2,5-dimethylhexane,
3-chloro-2,5-dimethylhexane
4-chloro-2,5-dimethylhexane は、3-chloro-2,5-dimethylhexane と同一物であるから区別できない。(「4-chloro-2,5-dimethylhexane」という命名は誤り。)
同様に、5-chloro-2,5-dimethylhexane は 2-chloro-2,5-dimethylhexane とするのが正しい。また、6-chloro-2,5-dimethylhexane は 1-chloro-2,5-dimethylhexane とするのが正しい。したがって、上図の3種類のみが問題の条件を満たすものである。
(解答例)
(a) sp2 (b) sp (c) sp2
(解答例)
(a) 環や炭素−炭素多重結合を持たないのだから、炭素−酸素二重結合が分子内に2つある。このような条件に合うのは、次の5種の構造。
2-methylpropanedial,
2-oxobutanal,
3-oxobutanal,
butanedial,
butane-2,3-dione
このうち、「ビアセチル, biacetyl」(慣用名)は、右端のbutane-2,3-dione である。
酢酸(acetic acid)から誘導される置換基として、アセチル基 CH3C(=O)- があるが、これが2つ向かいあって付いた構造を持っていることが名称の由来である。
(b) 分子式より不飽和度は1。多重結合がないのだから、環構造を1つ持つことが判る。多価の元素は、炭素と窒素で併せて3つだから3員環である。
(c) 与えられた分子式より、不飽和度は0。分子内に多重結合や環構造は持たない。また、それぞれの炭素に対し水酸基があるということから、3つの酸素はすべて水酸基を構成し、エーテル結合も持たない。このため、プロパンを母体とした次の構造であることが判る。
(発展)
(b) -NH2 はアミノ基で、これを持つ化合物はアミンである。炭素−窒素間が二重結合となった=NH はイミノ基で、これを持つ化合物はイミンである。また、異なる2つの炭素を架橋する -NH- も、イミノ( imino )またはエピイミノ( epimino )で命名してもよい。
(解答例)
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
(解答例)
数例のみを示す。
(a)
2-methylpropane,
2,3-dimethylbutane,
2,3,4,5,6,7,8,9-octamethyldecane,
1,2,3,4,5-pentamethylcyclopentane
(b)
methane,
ethane,
2,2-dimethylpropane,
1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-decamethylcyclopentane
(c)
cyclobutane,
spirobicyclopropane,
hexane,
1,3-dimethylcyclohexane
(解答例)
(a) 第1級水素とは、第1級炭素に結合した水素なので、-CH3 のことであるから、メチル基など、骨格の末端炭素を3つもつ化合物を書けばよい。
2-methylpropane,
2-methylpentane,
1,2,3-trimethylcyclopentane,
1,3,5-trimethylbenzene
(b) 炭素と水素のみからなる飽和化合物について考えると、第2級炭素、第3級炭素には水素が結合していることになるから、第1級炭素、第4級炭素のみからなるような構造を考えればよい。または、第2級炭素、第3級炭素の水素をハロゲンなど適当な置換基で置き換えたものでも、条件を満たすことになる。
methane,
2,2-dimethylpropane,
1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-decamethylcyclopentane
1,2,3,4,5,6-hexamethylbenzene
(解答例)
複数の異性体を持つものは、数例のみ示した。互いに異性体であるためには、炭素数をはじめとして、分子式が同じデアル必要があるので注意すること。
(a) ハロゲンを官能基として持つハロアルカンについて考える。位置異性体としては、次の3つ。
1-bromo-2-methylbutane,
2-bromo-2-methylbutane,
2-bromo-3-methylbutane
その他の骨格異性体が多種あり。
2-bromopentane,
1-bromo-2,2-dimethylpropane
(b) エーテル結合を持つシクロアルカンを考える。
ethoxycyclobutane,
1-methoxy-3-methylcyclobutane,
1-methoxy-1-methylcyclobutane
(c) シアノ基の位置異性体は、次の1種のみが存在する。
2-methylpropanenitrile
(d) 水酸基を持つシクロアルカンを考える。
3-methylcyclopentanol,
cyclopentylmethanol,
2-cyclopropyl-1-propanol
(e) カルボニル基の位置異性体は次の通り。ただし、アルデヒド基とケトン基を区別する場合には、これらは同じ官能基を持つとは言えない。
2-propanone (acetone)
(f) フェニル基(芳香環)を持つカルボン酸は、次の3種が考えられる。(これらは互いにメチル基の位置異性体である。)
2-methylbenzoic acid (o-toluic acid),
3-methylbenzoic acid,
4-methylbenzoic acid
(解答例)
(a) 2-methylpentane
(b) 2,2-dimethylbutane
(c) 2,3,3-trimethylhexane
(d) 5-ethyl-2-methylheptane
(e) 3,3,5-trimethyloctane
(f) 2,2,3,3-tetramethylhexane
(解答例)
n-hexane,
2-methylpentane,
3-methylpentane,
2,2-dimethylbutane,
2,3-dimethylbutane
(解答例)
与えられた名前に添った構造(主鎖を水平に描き、左端から番号をとった位置に置換基を置いた)と、その化合物の正しい名称(正しい主鎖は青線で示した)を記す。
(a)
2,2,6-trimethyloctane
(b)
3-ethyl-2-methylhexane
(c)
4-ethyl-3,3-dimethylhexane
(d)
3,4,4-trimethyloctane
(e)
2,3,5-trimethyloctane
(解答例)
数例のみ示す。
(a)
3,3-diethyl-4,4-dimethylhexane,
3,4-diethyl-2,5-dimethylhexane,
3,4-diethyl-2,3-dimethylhexane
エチル基は、3位または4位のいずれかでないと、主鎖がヘキサンではなくなってしまう。
(d)
(左) 2-methyl-5-(3-methylbutyl)decane
右のような構造では、炭素鎖が同じ長さの時は分岐が多くなるように主鎖をとるから、5-butyl-2-methyldecane となる。
(解答例)
(a) 下の図の2種類のねじれ形配座が考えられるが、より安定なのは左。
(c) のような定量的な見積もりにより、これら二つの配座の間のエネルギー差は、3.8 kJ/mol。これは、(発展)で示した根拠によれば、2つの配座だけを考えたとして、左の構造のより安定な配座にある分子は、右のねじれ形配座にある分子の5倍程度存在することを示す。
(b) 下の図の2種類の重なり形配座が考えられるが、より不安定なのは右。
一番不安定な重なり形配座と一番安定なねじれ形配座のエネルギー差は、17.2 kJ/mol。この値は、2つの配座だけを考えたとして、安定なねじれ形配座にある分子の数が、不安定な重なり形配座にある分子の約1000倍程度であることを示す。
(c) 以下のようになる。
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−メチル 0 kJ/mol
メチル−メチル 3.8 kJ/mol (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 4.0 kJ/mol (緑矢印)
水素−メチル 6.0 kJ/mol (橙矢印)
メチル−メチル 11.0 kJ/mol (赤矢印)
(発展)
「物理化学」で習うように、並進や回転などの1自由度あたりに分配されるエネルギーは RT/2 (J/mol) である。室温( T〜300 K )で分子の持つエネルギーのおよその目安として、RT を計算すると、およそ 2.5 kJ/mol となる。
一方、ボルツマン分布によると、エネルギー差 ΔE の2つの状態間の占有度の比は e−(ΔE / RT)で与えられる。( e−(ΔE / RT) は、しばしば、exp(−(ΔE / RT)) という表記法で書かれる。)
すなわち、エネルギー差が 2.5 kJ/mol であるような二つの状態の間で平衡が成立しているなら、上の状態には下の状態に比べて 1/e 倍しか分布しないことを示す。このとき、全体に対する占有率は
エネルギー差が 2.5 kJ/molのとき、(1/(1+e)=)27%。
( 5.0 kJ/mol では、1/e2 倍(12%)、
7.5 kJ/mol では、1/e3 倍(4.7%)、
10.0 kJ/mol では、1/e4 倍(1.8%)、
12.5 kJ/mol では、1/e5 倍(0.67%)、
15.0 kJ/mol では、1/e6 倍(0.25%)、
17.5 kJ/mol では、1/e7 倍(0.091%)、
20.0 kJ/mol では、1/e8 倍(0.034%)、
22.5 kJ/mol では、1/e9 倍(0.012%)、
25.0 kJ/mol では、1/e10 倍(0.0045%)となる。)
参照 教科書p90(下から4行目から下から3行目)
これを、エタンの重なり形配座にいる分子の割合を求めるのに使用してみる。ねじれ形配座と重なり形配座では、12.0 kJ/mol のエネルギー差があるので、その存在度の比は、 e(12 / 2.5) : 1 となるから、全分子中の重なり形配座の数を求める(この2つしか配座が存在しないものとして)計算式は、1 / (1 + (e(12 / 2.5))) となり、これを計算すると、0.008162 で、約 0.82 % となる。(教科書の記述に一致する。)
以上の議論を元にして、教科書p94(注意点)を読み、その意味を理解すること。
(解答例)
2,3-dimethylbytadiene の構造は、以下の通り。
従って、以下の3つのねじれ形配座が可能である。
このうち、左のもの(2つの水素がアンチ形にあるもの)では、メチル−メチルのゴーシュ相互作用が2つであるのに対し、残りの二つ(2つの水素がゴーシュ形にあるもの)では、メチル−メチルのゴーシュ相互作用が3つある。したがって、これらの間のエネルギー差は、3.8 kJ/mol である。
なお、問い 3.42 と同様に定量的なエネルギー図を描くと、以下のようになる。
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−メチル 0 kJ/mol
メチル−メチル 3.8 kJ/mol (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 4.0 kJ/mol (緑矢印)
水素−メチル 6.0 kJ/mol (橙矢印)
メチル−メチル 11.0 kJ/mol (赤矢印)
(解答例)
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−臭素 0 kJ/mol
臭素−臭素 (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 (緑矢印) 4.0 kJ/mol
水素−臭素 (橙矢印) 7.0 kJ/mol ← 問題 3.46 より
臭素−臭素 (赤矢印)
ここで、およその大きさは、n-butane の C2-C3 結合軸の回転に関するエネルギー(下図)を参照とした。
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−メチル 0 kJ/mol
メチル−メチル 3.8 kJ/mol (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 4.0 kJ/mol (緑矢印)
水素−メチル 6.0 kJ/mol (橙矢印)
メチル−メチル 11.0 kJ/mol (赤矢印)
(解答例)
分子の双極子モーメントは、様々な配座をとっている分子が、それぞれの構造に応じて示す値の平均となると考えられる。
1,2-ジブロエタンがとる配座のうちで、一番安定なものは、2つの臭素がアンチとなる立体配座である。このアンチ形配座から予測される分子の双極子モーメントはゼロとなるから、もしすべての分子がこの配座をとっているとすれば、観測される双極子モーメントもゼロとなるはずである。ところが、実験的に μ = 1.0 D の双極子モーメントが観測されている事実より、双極子モーメントがゼロではない配座をとる分子があることがわかる。
最大の双極子モーメントを持つ立体配座は、2つの臭素が重なり形をとるものであるが、これはかなり不安定なので、ほとんど存在しない。(下の解析で示すように、重なり型配座は、すべて併せても0.15%程度しかない。)
2つの臭素がゴーシュとなる立体配座も、双極子モーメントをもつ。これが有意な量(下の解析で示すように、およそ20%強。)存在しており、分子の双極子モーメントに寄与していると考えられる。
(以下、やや詳しい解析と解説。)
1,2-dibromoethane のそれぞれの回転配座に対応する双極子モーメントの方向を矢印で書き込んだ。また、これらの配座のエネルギーの定量的な取り扱いと、これに基づいたそれぞれの配座の寄与の定量的な議論は、以下のようになる。
図の下の数値は、ボルツマン分布より予測される相対的な存在度。(Newman 投影式の下の3行は、上より、計算式、計算結果数値、および計算結果数値を%で表したもの。)
1 | : | 1/e(18/2.5) | : | 1/e(5/2.5) | : | 1/e(20/2.5) | : | 1/e(5/2.5) | : | 1/e(18/2.5) |
1 | : | 0.00075 | : | 0.135 | : | 0.00034 | : | 0.135 | : | 0.00075 |
78.6 % | : | 0.06 % | : | 10.6 % | : | 0.03 % | : | 10.6 % | : | 0.06 % |
(解答例)
(a) 7.0 kJ/mol [ 計算式 : 15.0 − (4.0 × 2) = 7.0 ]
(b) 以下の通り。
(解答例)
左図のように、すべての炭素が直線的に伸びた立体配座をとる。このとき、C2-C3 結合軸にそった Newman 投影図(右図)を見ると、大きな置換基である手前のメチル基(C1)と向こう側のエチル基(C4-C5)が互いにアンチになったねじれ形をとっていることがわかる。
(解答例)
左図のように、すべての炭素と2つの塩素が直線的に伸びた立体配座をとる。このとき、C1-C2 結合軸、およびC3-C4 結合軸にそった Newman 投影図(右図)を見ると、大きな置換基である塩素とアルキル基が互いにアンチになったねじれ形をとっていることがわかる。
(解答例)
(a) ヒントを参照のこと。C2H6O 骨格は青で示した。
炭酸エステルの構造(
)を持つ以下の2つを挙げてもよい。
(b) 上図のうち、上段、中央の構造。( 2-hydroxybutanedioic acid )
(解答例)
1,3,5-trioxacyclohexane
だけが、与えられた条件を満たす化合物である。
まず、分子式より、分子内には二重結合または環の構造が1つだけある。カルボニル基は持たないので、二重結合があるとすれば、それは炭素−炭素二重結合であるが、このような場合、すべての水素が等価になるような対称性の高い構造を描くことができない。
もし、カルボニル基を持っても良いのであれば、次のような構造において、すべての水素が等価となる。
dimethyl carbonate, 炭酸ジメチル
環の構造を持つもので、対称性の高いものには、1,2,3-cyclohexanetriol のような構造も考えられるが、水酸基水素と炭素の水素が区別され等価ではない。
1,2,3-cyclohexanetriol
(発展)
炭素原子の酸化数に注目することも、このような問題を解く上で役立つ。酸化数とは、炭素原子に結合している陰性原子(酸素、窒素、ハロゲン)の数であり、すなわちアルコールやモノハロゲン化アルキルの水酸基やハロゲンの結合した炭素においては1、アルデヒドやケトンのカルボニル基炭素においては2、カルボン酸やエステル、酸アミド、シアノ基などの炭素においては3である。
ホルムアルデヒド H2C=O の炭素においては、酸化数2であるが、解答例に示した 1,3,5-trioxacyclohexane についても、すべての炭素の酸化数が2である。
これに対し、炭酸ジメチルにおいては、エステル中心の炭素は酸化数が4、メチル基の炭素の酸化数は1である。また、1,2,3-cyclohexanetriol においてはすべての炭素の酸化数が1である。
3 H2C=O ←→ トリオキサン
の三量化平衡においては、炭素の酸化数は変化しない。炭素の酸化数が変化するためには、一般に酸化還元を伴う反応が必要である。
(解答例)
教科書 p93、表 3.5 より、以下の数値を用いて、
それぞれの配座のもつ歪みエネルギーを計算することができる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−メチル 0 kJ/mol
メチル−メチル 3.8 kJ/mol
重なり形相互作用:
水素−水素 4.0 kJ/mol
水素−メチル 6.0 kJ/mol
メチル−メチル 11.0 kJ/mol
以下、4つの化合物について、C2-C3 の結合軸に沿った回転異性体について C2側から見た Newman投影式を示した。ここでは、C2側炭素上の置換基を固定し、C3側の炭素の置換基を60度ずつ右廻りに回転させながら配座異性体を生成している。
(a) 2-methylbutane | (b) 2,2-dimethylbutane | (c) 2,3-dimethylbutane | (d) 2,2,3-trimethylbutane |
最も安定なねじれ形配座(青枠で示したもの) | |||
ゴーシュ (メチル−メチル)×1 3.8 kJ/mol |
ゴーシュ (メチル−メチル)×2 7.6 kJ/mol |
ゴーシュ (メチル−メチル)×2 7.6 kJ/mol |
ゴーシュ (メチル−メチル)×4 15.2 kJ/mol |
次に安定なねじれ形配座(水色の枠で示したもの) | |||
ゴーシュ (メチル−メチル)×2 7.6 kJ/mol |
ゴーシュ (メチル−メチル)×3 11.4 kJ/mol |
||
安定な方の重なり形配座(桃色の枠で示したもの) | |||
重なり形 (水素−メチル)×3 18.0 kJ/mol |
重なり形 (水素−メチル)×2 (メチル−メチル)×1 23.0 kJ/mol |
||
最も不安定な重なり形配座(赤枠で示したもの) | |||
重なり形 (水素−水素)×1 (水素−メチル)×1 (メチル−メチル)×1 21.0 kJ/mol |
重なり形 (水素−メチル)×2 (メチル−メチル)×1 23.0 kJ/mol |
重なり形 (水素−水素)×1 (メチル−メチル)×2 26.0 kJ/mol |
重なり形 (水素−メチル)×1 (メチル−メチル)×2 28.0 kJ/mol |
(解答例)
以下、官能基名(その官能基を持つ化合物の一般名):上図においての位置、の順に示した。
二重結合(シクロアルケン):水色
水酸基(アルコール):黄
カルボキシ基(カルボン酸):青
エステル結合(エステル):青灰の四角
simvastatin と pravastatin の構造を、色を変えてほぼ重なるように示した。
上図からも明らかなように、構造上、3箇所の相違が見られる。
1. シンバスタチンではメチル基が、プラバスタチンでは水酸基になっている。(また、立体も逆転している。)
2. 左上のエステルの分岐が異なる。シンバスタチンでは、2,2-dimethylbutanoic acid のエステルであるのに対し、プラバスタチンでは、2-methylbutanoic acid のエステルである。
3. 右上のシンバスタチンの環状エステル(ラクトン)が、プラバスタチンではアルコールとカルボン酸に加水分解されている。
(解答例)
大きく分けて主要因は2つ。1つ目は結合角が sp3 混成から予想される角度に近づくことができること。2つ目は、各結合がねじれ型配座をとれるようになること。
1) 結合角歪みによる説明: シクロヘキサンの構成炭素を同一平面内においた正六角形の構造であるとすると、C-C-C 結合角は120度になってしまい、sp3 混成から予想される109.5度よりも大きい。教科書の図に与えられた左の構造のように、炭素原子が平面の上下に逃げることにより結合角が小さくなることができる。そのため、同一平面にあるよりも、非平面の折れ曲がった構造の方が安定である。
2) この折れ曲がりは、C-C 単結合の軸のまわりの回転によって実現される。このような空間的な原子の配置のことを、立体配座という。立体配座は、室温付近では分子のもつエネルギーによりお互いに入れ替わることができるものが多い。このことは、アルカン(すでに第3章で学んだ)と、シクロアルカン(第4章で学ぶ)について、共通である。
シクロヘキサンの、この図に与えられた左の構造は、「いす型配座」と名付けられており、一番重要な寄与をしている。
教科書 4.5 節、4.6 節等で扱うように、シクロヘキサンの立体配座の中で、いす型配座では、すべての隣りあった2つの炭素原子において、結合した水素が互いに一番はなれた構造(ねじれ型配座)となっているために安定である。
(解答例)
シクロアルカンは、環を構成している炭素同士の間の結合にそった回転に制限がある。もし、右手の中指を左手でつかんでいるとき、右手の親指の位置と人差し指の位置とを入れ替えることができないように、環を構成している炭素に結合した置換基は、環の面に対する上下を入れ替えることができない。※
そのため、次図のように、環の面に対して2つのメチル基が同じ側にあるもの(cis-体)と、逆側にあるもの(trans-体)とがあり、互いに区別される。これをシス−トランス異性という。
註※:これは、結合の切断と再結合を伴わずには炭素上の4つの結合の立体関係を反転させることができないからである。立体の反転については、たとえば教科書 11 章で詳しく学ぶ。
なお、trans 体では、更に次の2つの異性体が区別される。
上図に示した2つの構造は、空間内の平行移動や分子全体の回転の操作のみで互いに重ねあわせることができず、右手と左手のような関係にある。このようなものは互いに光学異性体(鏡像異性体、対掌体)であるという。
次の3次元模型に、これら二つの構造を示した。重ねあわせることが可能かどうか、3次元模型を動かして検討してみよ。
左の trans-1,2-dimethylcyclohexane の3次元模型
右の trans-1,2-dimethylcyclohexane の3次元模型